「森山先輩、うちの部活ってマネージャーとかいないんスか?」


 と、前からずっと考えてたことを聞いた。女好きで有名な森山先輩ならそういう情報に詳しいと思ったからだ。
そもそもなぜオレがマネージャー云々について考えたかというと、サッカー部の友人の一言だった。
 「ちょっと聞いてくれよ黄瀬ー夏休みに合宿いったんだけどね、それがキツくてうちのマネジ辞めちゃったんだよー」
黄瀬の所のマネージャーはどうよって、いるのが当たり前といわんばかりに尋ねられたのだがオレにはバスケ部のマネージャーについて全く見当がつかなかった。


「まあ、いることにはいるが」

「だが?」

「あれはダメだな」

「……はあ、」


 あの女性ならオールレンジな無類の女好き森山先輩が遠くを見つめてため息をついた。つまりそれほどの人だということ。
 オレはなんだかバスケ部の闇に触れたような気がして、それ以上は聞けなかった。




 ▼




 バスケ部にはマネージャーが一応存在することを知ったオレは、その人がどんな人なのか気になりつつも練習を続けた。あの人かもしれない、この人かもしれないといつもよりギャラリーに視線を向けるのだが、それらしい影は見当たらなかった。


「今日は休みなんスかね…」


 ならばこれ以上探してもきっと無意味だろう。オレもいつまでも気にしてたら練習に集中できない。今日はシュート率が悪いって笠松先輩にさっき怒られたばかりだし。


「集中、しゅうちゅ」

「あ、丁度いいところに黄瀬はっけーん」

「…はい?」


 スリーラインに立ってルーティングをしていると、後ろから肩を叩かれた。振り向くと女子がいた。制服に入ってるラインの色を見るに、どうやら三年生だ。


「笠松知らない?」

「先輩?…なら部室に」

「あっそう……あー、出てきたわ」

「ホントだ」

「ありがとうじゃあね」


 笠松先輩を探しているという正体謎の先輩は、背中を向けたまま片手を上げていった。反対の手にはなにやらプリントの束を抱えている。もしかしたらあの人がバスケ部のマネージャーなのかも……


「って、ええ!?」


 なんとなく笠松先輩とマネージャー(仮)のやりとりを見ていたら、目を見張る光景が。あの女性免疫ゼロの先輩がマネージャー(仮)の背中をどついたのだ。それはもうオレにいつもかましてるような痛いやつ。マネージャー(仮)は痛そうに腰の辺りを押さえて飛び跳ねている。ああ痛そうだ。
………って、痛そうだとかそうじゃなくて、え?あの笠松先輩が女子と話してる!しかも言い合いとかしてる!まさか!


「あっ森山先輩!」

「なんだ黄瀬」

「あの、あれ、もしかしてマネージャーっスか!?」


 あの前下がりボブでニーハイでちょっと背が高いスレンダーの人!と少し興奮気味で森山先輩に聞いた。


「ああ…………うん」

「マジっすか!っていうか普通に笠松先輩と会話してるなんて何者!?」

「いや、何者もなにも……」


 これから言うことを驚かないで聞いてくれよ?と先輩はいつになく真面目な顔でオレに向かい合った。



「あれはな、あんなナリしてるけど正真正銘な男なんだ」

「……………はい?」


 オレのワクワクを返してください。




オレが女装を始めた理由は。

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……っていうかんじの導入から始まって、夢主がどうして女装を始めたのかを解いて(?)いく話でも書こうかと思ってました。女装始めたのは「笠松の女嫌いを直してやりたい」にするか「男嫌いで見るのもイヤ!(花ゆめの某百合漫画っぽく)」にするか悩んだんですがどちらにしても続きの展開や終わりが全く浮かばなかったのでボツになりました。

っていうか新年一発目がこれか…なんかすいません。

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