コンビニで買った普通のソフトクリームを食べながらながら空を見上げた。ジャングルジムのてっぺんに座って見上げた空はなんだかどんよりしていた。 これはひと雨来るかもしれない、そう思いながらコーンをガリリと噛んだ。 「マズ……」 「だから言ったじゃねえか、梨味のが断然旨いって」 オレと同じようにジャングルジムに座ってる女が、手に持つアイスを見下ろして言った。 学校からコンビニに来る途中あれほどコンポタ味はやめろって言ったのに、どうしても食いたいんだったら温めてもらえって言ったのに。なにが「私のコンポタ愛は人知を超えます」だよ。難しい言葉並べてコンポタの愛を語ってもオレにはわけ分かんねぇよ。 「青峰君、あげます」 「いらねえ」 女は一口だけかじったゴリゴリ君をオレに突き出してきた。そもそもそれってオレが買ったアイスだよな?普通のより高いんだからもっと味わって食ったらどうなんだ。その両手に乗せて有り余るほどの愛があれば余裕だろうが。 「無理なもんは無理です。これはコンポタの名を語る不届き者です」 「むしろ、まんまコンポタの味がすんだけどそのアイス…あとそれを近づけて来んな」 口に押し付けられたからちょっと舐めてみたけど、やっぱり不味かった。 「そうですか…」 困った顔しながら女はアイスを袋に戻した。コンビニでもらったビニール袋にソレを入れて口をきつく縛った。 「仕方ないですね」 「あっ、てめ…」 ちょうどジャングルジムの近くにあったゴミ箱へ、女はビニール袋を投げた。 ガシャン!錆びた鉄製のクズ籠がなった。 「ナイッシュー」 「ナイスじゃねぇよバカ」 まったくヒトの金をなんだと思ってやがる。そこは普通我慢してでも食い切るもんだろう。 「青峰君」 「なんだ」 「……雨です」 「は?」 女が曇天を見上げて、やっぱり降ってきた。と呟いた。オレもそれに倣って上を見れば顔にぴちゃりと冷たい水滴が。ひたひた、ぽつぽつ、雨足は次第に傘がほしいほどとなっていった。 「うわ、やべ…」 慌ててジャングルジムから降りて、公園中央に植えられている木の下で雨宿り。ここならなんとか雨をしのぐことは出来ているが2人で雨宿りするにはいささか頼りない木だった。 「折り畳み傘とか持ってねぇの?」 「学校に置いてきました」 「つかえねぇ」 チッ、と思わず舌打ちをした。 ついでに隣にいる女がどんな顔をするのか気になって横目で見てみたが、突然降ってきた雨に怒るでもイラつくでもなくただ厚い雲を眺めていた。 「しばらく続きそうですねぇ…」 「どうすんだよ」 「どうしましょうか」 女は顎に手を当てて考え込んだが、それほど困ってるようには見えなかった。 「そうだ」 「今度は何だ」 「うちに寄ってきますか、青峰君」 「……え?」 ここから直ぐですし、此処に居てもたいして雨宿り出来てないですし…と独り言のように空を見ながら女は言う。 たしかに、公園を出ればすぐに寺が見える。 「……じゃあ、行くかな」 そうと決まれば2人で薄っぺらなカバンを抱えて「いっせーので」と掛け声をつけて屋根まで走った。 この前は寺の縁側までしか行かなかったから、ちゃんと招かれるのはなんだか落ち着かない。 女はどうかと横目でみれば、息を切らしたポーカーフェイスがそこにあった。やっぱ、誰かに似てる気がするんだよな… まあいいか。 (青峰君、傘を一本貸してあげます) (えっ) (もう暗いですから帰ったらどうですか?) (あげてくれねぇの?) (だめです。いやんあはんな事想像してたでしょう青峰君) (……すまん) ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐ ※コーンポタージュや〇リ〇リ君に悪意があるわけではございません。あくまで私の想像でありますので、参考になさらぬようお願いします。 |