02

どうも。

泣く子も黙って見惚れる宇宙1アイドル、明日子です。私があまりにもかわいすぎて、審神者になったわけだけれど。普段の生活はそこまで変わっていない。審神者業の広報活動のため、その後もアイドル活動は続けているのだ。

というよりも、アイドル活動しかしていない。審神者をしなくてもいいのかと思いながらもアルバムのレコーディングをしているうちに、半年がすぎていた。

そんなある日。ラジオ番組にゲスト参加したところリスナーから「刀とはどんな会話をしていますか」と質問された。

「そうね。朝餉はどうするかとか、夕餉はなんだとか……………………」

あらやだ私、歌仙くんと食事の話してない。

そしてなにより、審神者の仕事も全くしていないことに気づいた。これはまずいのではないかとその番組内で政府に問い合わせると、普通はすぐに日課の任務とやらをこなして練度とかいうものが上がってるものらしい けれど、私の場合はアイドル活動がそれだったのだと言う。

それでは、なぜ歌仙くんがいるのかわからないではないか。と、自分が招いた問題にも関わらず刀である彼のことが気になりだし、居ても立ってもいられなくなった。ラジオ番組の収録を本丸の特設スタジオで終えると、急いで歌仙くんの部屋に急行する。

「歌仙くん、いる?」

「……主?」

「そう、主」

「どうかしたかい。おなかでもすいたのかな」

そこでようやく襖を開け、顔を出した歌仙くん。……たしかに私たち食事の会話しかしてこなかったけれど、トップアイドルにそれはないわよ。でも私女神のように優しいから許してあげるわ。

「ちょっと歌仙くんと話そうと思ったのよ。なにかしていたのかしら? それなら出直すけれど……」

歌仙は驚いたように目を見張ったが、すぐに顕現したときと同じように柔らかな笑みを浮かべる。そして「よかったら縁側で話そうか」と部屋から出てきてくれた。

日の当たる縁側に2人で並んで座り、目の前に広がる日本庭園を眺める。そこで先に口を開いたのは、歌仙だった。

「ちょうど詠っていたところなんだ」

うた、……歌? 歌は、アイドルである自分の生業のひとつである。早くも歌仙くんとの共通点見つけることができた。歌仙くん歌が好きだったとは。

「歌仙くんも歌うのね」

「も、ということは……?」

半年間も食事の会話しかしていなかったから、どう会話を広げようかと考えていたが、歌は私の得意分野だ。ここから会話を広げていこう。

「それじゃあダンスは?」

「だんす?」

「舞いよ」

「舞いか。すごいな、君はとても雅な人だったんだね。まさか舞いまで舞えるとは思わなかったよ」

「ふふん。なんていったって私、スーパーウルトラキューティアイドルだもの。今度一緒に踊りましょうか」

「ああ。あいにく僕は舞いは見る専門でね。よかったら主の舞いを見せてくれないかな」

「ええ、もちろん。なんなら衣装だって着てもいいわよ」

「そんなに本格的なこともできるのか。わかったよ、楽しみにしているね」

そのあとは、せっかくだからと歌仙がお茶を煎れてくれ、2人で縁側でお茶をした。これまでどうしていかと訊ねると、歌ったり庭の剪定をしたりと好きにすごしていたそうだ。

「私、アイドルなの。年中無休ずっとね。だからこれからもあなたとあまりすごせないけれど……毎日時間をつくって、こうして話したいわ」

正直な気持ちを伝え、歌仙の様子をうかがう。歌仙は明日子の真摯な物言いに応えるように「ああ」と強く頷く。

これからは、審神者もがんばろう。とりあえず明日は、鍛刀とかいうやつをやってみよう。秋空のした、明日子はそう気持ちを新たにしたのだった。



151009
151103 修正
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