タケルほのぼの

※下ネタ注意です



礼子は、ただひたすらに後悔していた。ああ、なぜこんなことをしてしまったのか。数百円くらい惜しまずに、コンビニに走ればよかった。そうすれば、こんなものを見つけなくてすんだのに。座り込んだ足の下から、じわじわと伝わってくるのはフローリングの冷たさだけではなかった。

震える指先で、問題の物を撫でる。分厚く、カバーのかかったそれは一見するとただの単行本だ。しかし、印字されたタイトルとイラストには年齢制限を匂わせる絵面が並ぶ。礼子の指は、ゆっくりとタイトルをなぞった。

「……おねショタパラダイス」

まさか、タケルの部屋でこんなマンガを見つけてしまうだなんて。なんてことだ。しかもなんだ。おねショタって。ふざけるな。なんでこのチョイスなんだ。

おねショタとはつまり、お姉ちゃんと弟がイチャイチャするジャンルの総称である。かなりアブノーマルなカテゴリーだったりする。……まさかと思うが、タケルのやつ。

ぶるり

悪寒が礼子の背中を走った。今すぐ逃げなければ。弟に逆襲される。エロ同人みたいに。そうは思うものの、礼子の体は動かない。衝撃すぎて、頭が追いついていないのだ。

そこへ、扉の開閉音。

「姉ちゃん、ジャンプあった?」

タケル、いや……ケダモノのご登場である。

「イヤーッ!ケダモノー!」

礼子は、手元にあった忌まわしき物体を握りしめ、叫んだ。タケルは、目を丸めてドアの前で立ち尽くしている。

「いや、は?なに?……って、それ」

ついにタケルが礼子の手元にある『おねショタパラダイス』に気がついた。途端に顔から一気に血の気が引いていく。

「待って姉ちゃん!誤解だから!」

「近寄るな外道!私を押し倒すつもりでしょ?!エロ同人みたいに!エロ同人みたいに!」

「落ち着いて!?」

タケルが礼子の暴走を止めようと身をのりだし、礼子はためらうことなくそのボディに鉄槌を放った。

「ぐえぇ」

カエルが潰れたような声をうめき、ゆっくりと身を床に沈めるタケル。ぷるぷると震えながら、それでも懸命に口を動かす。

「それ、カバー違い……」

「は?」

「だ、から……仁王のやつが……いた、ずらで……カバー……替えやがった……うっ」

カバー違い? 礼子はそっと、単行本をめくった。中身は、ジャンプで大人気の戦闘系マンガだった。……なんということだ。

「う、うう」

「…………泣くな」

「泣いてない……」

「……ごめんて」

その後、しばらくは礼子のあたりが柔らかくなった。それはなによりだが、仁王のくだりについて関心がなくてよかったと、タケルは心の底から安堵した。

……実は仁王に「カバーイラストの姉ちゃん、タケルの姉ちゃんに似とるじゃろ」と言われた(そのあとすぐ幸村部長に沈められていたが)なんてことを言った日には……。おそらく血を見ることになるだろうから。


151207

奏トさまリクエストの、「飛んでた」タケルほのぼのでした。たいっへん遅くなってしまってすみません。そしてこれはほのぼのなのか……。この姉弟だと、どうしてもギャグ要素が入ってしまいます。すこしでも楽しんでいただけたらうれしいです。

19万打企画へのリクエスト、ありがとうございました!


←メインへ
×
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -