07.人助け

「年賀状ってなんで出すのかな?郵便局にお金が入るだけでしょぶっちゃけ。いくら私の好きなアイドルがCMやっててもやっぱり解せない」

「…」

「書くの面倒だけど、メールも面倒なんだよね…あ、修正テープ取って。はみ出た」

「…自分で取り行けよ」

「やだよ寒い」

タケルは嫌悪感を全開にしながら姉を睨む。姉は姉で「なにか問題でも?」とすまし顔。

「…はいはい」

言い返す気にもならなかったタケルは、大人しくこたつから出て修正テープを姉に投げた。

ピーンポーン

「……」

「……」

そこで、二人の間でインターホンの音が響いた。お互いを見て、目で会話。「立ったついでに行ってきて」「やだ」「行け」「やだ」

ピーンポーン

二度も鳴ると、こちらも焦る。郁は仕方なくタケルの拒否を受け、立ち上がった。さ、寒!床暖房にしてよママ!

「にしても誰だろ。正月から働く可哀想なバイトさんかな…」

玄関について、適当に髪を整える。

よし。鍵を解錠し、ドアノブを回す。あ、人確認し忘れた。そう思った時には既に遅く、ドアはゆっくりと開いた。外の明るさに目を細める。しかし、その目はすぐ見開かれることになる。目の前に見えた来客者によって。

うお、おおおおお

「あ、おはようございます…」

「……ございます」

ジャッカルだ。ブラジル産で最近父親が就職したコーヒー豆だ。突然のエンカウントに驚きすぎて固まっていると、ジャッカルが慌てた様子でタケルの部活仲間だと説明しだした。

「あ、ああ…じゃあタケル呼んだ方がいいよね。ちょっと待ってて」

失礼だけど、よかった…ジャッカルで。これが仁王辺りだったら息をひきとるとこである。一先ず胸を撫で下ろして、リビングへ戻る。

「タケル、部活の人」

「え」

「コーヒー豆っぽい人だよ」

コーヒー豆と聞いて、察しがついたのだろう。肩から力を抜き、安心しているタケル。
幸村か。幸村が怖いのかお前。

「いないって言っといて」

「はあ?」

「年賀状俺が出しに行きますからいないって言って下さい」

べ、別にそんなつもりではなかったが…。まあ、よしよし…じゃあ姉さんが言ってきてあげるか。再び玄関へ行くと、ドアを開けたままにしようか中に入って閉めようか迷ってるジャッカルがいた。こういう人と結婚したい。

「ごめんね、タケル今いないみたい」

「え」

「うん…明らかにこれタケルの靴だけどいないらしいの」

玄関にある靴を見て、居留守だとすぐに分かったらしいジャッカル。元から痛んでいたこめかみに手を添えて、幸村にまた怒られる…などと呟いている。…なんだか流石に可哀想になったきた。

「そうだ、ジャッカルくん…タケルの初恋誰か知ってる?」

「え、初恋…ですか?」

「ほんともーびっくりしちゃうよ、これ聞いたら。実はね、」

「姉ちゃーん!」

タケルが召喚されました。暴露話に耐えきれなくなったらしいタケルが、顔を赤くしながら慌てて出てきた。ジャッカルは状況についていけないらしく、タケルや私を交互に見ている。

「ちょ、ほんと、マジでやめて!つーか居留守お願いしたよね俺!」

「なんか彼、可哀想で…。てなわけで、さっさと支度していきなよ。あ、ついでに年賀状出してきてね」

「うう…」

タケルが項垂れてる横では、ジャッカルが拳を上にあげて感極まっている。

「本当に助かりました…ありがとうございました!」

「いえいえ」

二人が出ていくのを、手を振りながら見送る。うん、いいことしたなぁ。


?????? 人助け/完
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