ボーっとする頭。にやける口元。浴びせられる罵声。 …あー、ナニコレ。
「キモイアル!まっじキモイアルゥ!凛のにやけっぷりったら半端ないネ!」 「チャイナァ、そいつがキモイのは元からだろィ。なに今更驚いてんでさァ」 「つーか、お前ら罵りすぎだろ」 「お前ら一々ひでーなァァァ!」
修学旅行二日目。 昨日のことを思い出したらにやけちまうのが私。ダメだと分かっていても口元はいう事を聞いてくれない。 おかげでこの沖田神楽コンビに罵られまくりだよ、凛。
がこん、と私の頭に何かがぶつかった。 BLと書かれた何か。すっごい重たくて頭痛かったけど、BLとかいうものを持ってる人は誰なのか知りたかった。
「あのーこれ誰のー?」 「あ、俺のだ。すまん」 「え、これ桂くんの?」
長い髪を揺らしながら近づいてきた桂くん。 こんな重いもの、一体何に使ってるのか…。不思議だ…。 地球外生物飼ってるし、桂くんって不思議の塊みたいなもんだよね。桂くんってか、エリザベス?
「BLってボーイズラブ?」 「違う、ブルーレイだ」 「えっ」
ブルーレイって…なんで修学旅行にブルーレイィィィィ!? ダメじゃね、それ。持ってきちゃダメじゃねェ!?なんで持ってんだよ! 桂くん学級委員だったよね!?学級委員が率先して、不要物持ってきちゃダメだろォォォ!学級委員がくさってるからクラスが腐るんだ。 それ以前に担任が腐ってるな。
「持ってきたんじゃない、買ったんだ。これで俺もブルーなレイになれるぞ!ハッハッハッ!」 「ブルーなレイってなんだよ。思いっきりパクリじゃねーか」 「なんでも近頃のファミコンは……」 「これファミコン違うゥゥゥゥ!」
桂くんに構ってたらキリがない。私が死ぬ。 こんな一気にボケられてもさー…、つっこみの気持ちも考えような?な?
「奈良アルかー、私行ったことないから楽しみネ!」 「私も行ったことないんだー。大仏とかでかそうだよね」 「大仏サイズの寿司をつくってかぶりつくのが私の夢アル」 「いや、聞いてねーから夢とか」
バスから降りて大きく伸びをした神楽ちゃん。 うわー絵になるー…これは沖田くんも惚れるよねうんうん、なんて頷いてると私はおいていかれそうになった。 急いで追いかけて、みんなに追いついた。そしたら、あることに気がついた。
……神楽ちゃんと沖田くんが明らかにおかしい。これは絶対何かあったとしかいい様がないくらいおかしい。 ぐいっと、高杉の制服の裾を引っ張って何があったのか聞いてみる。
「あの二人、おかしいよ。どうしたの?何があったの?」 「お前って周りのことに関してもダメなんだな」 「はァ?結構敏感な方だと思ってるけどね。結構アンテナビンビン張ってるからね」 「それはイケメン察知能力のアンテナだろォが」 「なぬ!?いいから教えてよ、ねぇ!」
ぐいぐいと高杉の服の裾を引っ張ると「伸びる」と言って私の腕を払った。
「アイツら聞けばいいだろーが。なんで俺に聞くんだよ」 「ダメ?アンタが頼りになるかなー、と思ったんですけドメスティックバイオレンス!」 「お通語がうざいから却下」 「わーわーわー!ごめんごめん、もうしないから!」 「凛、高杉!なに二人でイチャコラしてるアルか!さっさと歩くネ!」
いや、イチャコラしてないから。これただ情報交換だから。イチャコラじゃないから。 つーか、イチャコラしてんのお前らァァア!!私たちを差し置いて何があったんですか、昨日の夜に!
「そうでさァ、テメェら見せつけてんじゃねェや。ぶっ殺すぞ」 「なに怒ってんだよ。なに、悪いことした!?第一イチャコラしてねぇかんな、私ら!」 「お前ら喧嘩すんな、うるせェ。あー、ちょ沖田来い」 「凛、こっちに来るネ」 「うん、いいよ。神楽ちゃんの小さな胸に飛び込ぶふぅへ!」 「誰がぺチャパイアルか」 「誰もそんな事言ってな…」
神楽ちゃんの蹴りで死にそうになった。
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