「きりーつ、れい。あざーしたァ」
やる気のない礼を終えて、この教室ともおさらばだ! って別に、今日卒業するわけでもないしなんでもないんだけど。今日はおさらば!っていう意味で。 別に礼する必要もないだろう、と思ったんだけどなんか銀八がやれやれうるさかったからやったらしい。
一週間に二日の休みだってのに、今日は修学旅行説明会とかいうので、私の休みは呆気なく終わった。 もう日が傾き始めていて、あー今日の夕飯は焼きソバかな、とか思ってると後ろから思いっきり誰かに叩かれた。
「だ、誰だッ!なにもぬぉぅ!?」 「石頭」 「うっせ!」
石頭っつーのは、多分鞄を頭に叩きつけられても私が悲鳴の一つも上げないことを言うのだろう。 まあ、ちょっとびびったからぎゃあ!くらいは言ってやろうと思ったけど。やめといた。 てか、石頭じゃねーし!たまたま、言わなかっただけだし!今日はちょっとソフトだったしね!
「何のようですか、コノヤロー」 「特に用はねェよ」 「ふーん」
特に言い返すこともなかったから、それだけ言って私は高杉から視線を外す。 時間が時間だったし、もう帰らなきゃななんて思って足を動かし始める。 たしか、高杉はチャリ通だったな。あー、後ろ乗せてもらいてェ。 そう思っていたら、高杉が自転車を引いて、後ろを手でぽんぽんと叩いているのが目に入った。
「え、っと。それは?」 「乗っけてやるよ」 「うぎゅ…。し…仕方ないなぁ!乗ってやろうではないか」
よっこいしょ、と乗って高杉も自転車に乗った。
「重…ッ」 「ちょ、死ねよ」
第一声がそれですか。流石に傷つくんですけど。 自転車をこぎ始めて、風が頬に当たる。 きゃーー!気持ちいいぜ、風になれるよーーーう!
「きもちーい!」 「うるっせェよ、ちょっと黙れ」 「うううしろを見てる暇があるなら前を見なさ、ああああッッ!ほら、前っ、前ッ!誰かいる、ぶつかるうううう!ぎゃあああああッ!」
私がそんなにうるかったのか、高杉が自転車に乗りながら私の方を向いた。 おいおい、ダメだろ。ちゃんと前向いて運転しないと危ないんだよーう? 危ないっていうか、もう既に一人犠牲者出そうになりましたからね。 結構危なかったからね、私が言わなかったらきっとどっしゃーん!でがっしゃーん!だからね。
「きゃあッ!」 「すすすすすすみませんンンン!?」 「いってェ…お前思いっきりブレーキかけすぎなんだよ。急に止まって石頭と激突した」
あ、やばい。今、高杉と一緒だったな。 この目の前の超絶美人と私が似てるなんて思わないでもいいです。 なにこの美人!…と、あそこにいる普通なのは?とか思ってくれても構いません。 ただただ、私は目の前の超絶美人を見て顔が真っ青になるのを感じていた。
「あらぁ、凛じゃない!」 「かかかかか…母さんんんん!」 「は?」
目の前の美人さんは母さんでした。
ごめん……、家が超汚い。
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