ミルフィ〜〜ユ




結局奈良はあまり見て回れなかった。行く予定だった室生寺にも行けなかった。
途中男女で別行動になってしまったせいで、時間があまり取れなくて、行けなかった。
神楽ちゃんは残念がってたけど、沖田くんと仲良くできてるみたいだからよかった。

これで修学旅行は終わり。あとはバスに乗って帰るだけ。
バスに乗る前に荷物の整理だとかしていて、早く終わった私は自動販売機に向かっていた。
缶コーヒーを二つ買って、だるそうにベンチに腰をかけている奴の頭にコーヒーを置く。

「よっ」
「んだよ、もっと優しく置きやがれ」
「アンタもこんな感じだったよー?」

プルタブを開けてごくごくと中身を飲む。
高杉もコーヒーを飲んでいた。

「今日、沖田くんと何話したの?」
「男の子の事情」
「じゃあ、私にも教えてくれ」
「じゃあってなんだよ。お前自分のこと女だと自覚してねーのか?だったらいい。正常な証拠だな、そりゃあ」
「どーいうことォオ!?」

高杉は私と女として見てくれていないの!?
それはリアルにショック。泣ける。泣ける。本当に泣ける。
畜生、前霞んできやがった。なんだコレ。マジで私泣いてるの?ダメだよ、かっこわるいよ、泣かないで凛。

「まあ、二人の仲が戻ったみたいでよかったよ。なんか喧嘩したらしいじゃん」
「喧嘩っつーか…まあ喧嘩だな」
「なに?アンタ知ってんの?その…喧嘩?の中身」
「知らねーことはねェけど、思い出したくない」
「そんなに酷かったんですかぁ…」

一体私の知らないところでなにが起こっていたんだ。というか、私は一体何してたんだ!

「沖田にもっと素直になれって言われた。俺が言ったことなのによォ」
「あ、私も。神楽ちゃんに自分の気持ち伝えて相手の気持ち知れって言われた。それ私が言った言葉なんだけどね」
「「…………」」

沈黙ゥゥゥゥ!!言っちゃいけなかった、これ!絶対言ったらいけなかったこれ!
地雷…地雷踏んだァァア!自殺行為だったよ、これェ!まるで自分から「私好きな人いますー」って言ってるようなもんじゃんかァァァ!
ちょっ、恥ずかしくて高杉の顔見れないわ。どうしよう、これ。早くバスの準備してくれよ、運転手ゥゥゥ!

パッと横を見たら高杉と思わず目があった。その瞬間に火照る私の頬。
ぎゃああああ!なんで横なんか見たんだ、私のバカァァァ!

「気持ち伝えるって…誰にだよ」
「素直になるって…誰に素直になるの」

相変わらず私は俯いたまま、高杉は私と反対方向を見つめたまま会話が成立していた。

「荷物全部乗せたから乗っていいぞー!!」

銀八の声でそこらじゅうで話していた生徒たちがわんさかわんさか、バスに乗り込んでいく。
私より先に高杉が立ち上がって、コーヒーの缶を投げたら見事、ゴミ箱に入った。

「まあ…、気持ち伝えられるように頑張れや」
「アンタも……、素直になれるように頑張って」

なんかちょっと気まずくなったけど…バレないですんだからよしとしよう。


私の修学旅行は幕を閉じた。