沖田くんからメールが来た。あれ?私、沖田くんにメアド教えたっけ?って思ったけど、まあそんな事はどーでもいいから内容。 酷いもんだった。私の扱いって最近酷くない?なんか沖田くん酷いよね、本当。
『今から十分以内にファミレス来なかったら殺すから』
あり得ないよね、こんな文章送ってくるとか。本当あり得ないよね。 家の中は基本スウェットで過ごす私。もちろんメールが来たときだったそうだった。 着替えるのに、三分かかるとして、ファミレスまで五分以上かかる。 ――ああ、私これ死んだ。
「遅ェや」 「ち…ちゃりんこかっ飛ばしてきたんだからね…」
「あと三十秒遅かったら殺してた」なんて真顔で言う沖田くんが恐ろしくて仕方ねェ。 私よく生きてられんな。生命力すごいんだな、私ってば。
「んで、なんですか、用事って」 「お前、高杉とどういう関係なワケ?」 「いきなりそれェ!?」
いや、どういう関係って言われても説明しにくいし…。 飲んでてオレンジジュース噴出しちゃったし。沖田くん汚ェって言ってるし。 いやいや、それよりも話の内容だよ。
「どういう関係なワケ?」 「質問を質問で返すんじゃねェや」 「だぁーって分かんないんだもんんんん!!」
そりゃあ、わかんないよ。私たち中途半端だものォ! 今日だってさーなんかさー色々あったすィ!?なんかちょっと泣きそうになっちゃったしィ!?ビンタされちゃったしィ!? あ、思い出しただけで悲しくなってきた。泣けるかも。
「じゃあ、お前は高杉のことどー思ってるんでィ」 「そ…それは……」 「それは?」 「好き、なんじゃね?」
ぱしゃりとシャッター音が聞こえた。沖田くんの手元には携帯。 あ、これ、写真撮られたな。
「真っ赤な水城、もーらいっ」 「消せコノヤロー!!」
なんで沖田くんはそんな事私に聞くわけ?別に聞かなくてもいいじゃん。
「ねぇ、じゃあさ…。沖田くんには好きな人、いないの?」 「はっ!?」 「あ、いるんだ」 「言ったら殺すぞ」 「死ぬのは嫌だから言いません。絶対言わないから。これでも私、口は堅い方なんだよ」
沖田くんに頭をぐりぐりとやられて、その手を放してもらった。 頭を抑えながら沖田くんを見ると顔が真っ赤に染まっていた。 うわー、沖田くんてこんな子だったんだ。
「チャイナ…」 「え?」 「チャイナが好きなんでィ」 「えぇーー!?マジで!?何それうわぁあっ!応援するよ、私。頑張ってね、沖田くん!」
沖田くんの手をとって目を輝かしていっても、沖田くんからは冷たい視線しか感じ取れない。 …なんで?なんで沖田くんは私にそんな冷たい視線しかくれないの!?
「お前みたいに、仲良くなれりゃ苦労しねェや」 「え、それどゆこと?」 「だーからぁぁ、俺らいっつも喧嘩してんじゃんか。そいで、すぐに仲良くなれたら苦労しねぇって言ってんでさァ」 「でも修学旅行があるじゃん」 「あ…、」
忘れてた、という顔をした沖田くん。修学旅行の班は、私・高杉・沖田くん・神楽ちゃんの四人だ。 そん時に仲良くなれりゃあ、楽勝だろうに! …私も頑張ろうっと。
「んじゃ、そういうことで。協力してくれんだろィ?」 「あ、私にも協力してね」 「えー」 「えーじゃねェよ!」
ファミレスを出て、私は家に帰った。家に帰る道で、気づいたことが一つ。 修学旅行の前に母さんが帰ってくるじゃないかァァァァァァ!!
|