「たっ…、高杉ィィィィイ!!」
どこにいるんだ、あの馬鹿野郎!授業サボって怒られるの、私なんだぞ!? お前が怒られる分ならどーだっていいけどよォ、私が怒られるのはダメだろう。断じてダメだろう。
それにしても、どこにいるんだ本当。 学校中の隅から隅まで探したっていないってのに…。ほかに探してない場所なんて……あったわ。 校舎裏!流石にあそこには放課後以外人はいないだろーなーとか思ってたし。だって校舎裏っていったら告白の定番でしょ?邪魔するのもアレだし、放課後行ってもアレだし。 うん、ってことで私は校舎裏に行くことを諦めます。…でもやっぱり諦められない。えーどうしよーえー…
悩んだ末、やっぱり行くことにしました。三秒くらいいて帰ってこよう。
「晋助ぇ…」
…ぁ?晋助って誰だっけ。え?なに、今校舎裏で何が起こっているんだ!? ってか、そんなところに私は遭遇しちゃうのォォォォ!?ほんっとに運のない奴だな! 心底自分の運の悪さを嫌うわ!
校舎裏には遠くからだとよく見えなかったけど、あの紫色の髪の毛は間違いなく高杉…!って思う奴と何組だったか忘れたけど、とりあえず可愛らしい女の子がいた。 か…完全に場違いな私…!ってか、なんで私高杉なんかを探しに教室から飛び出してきたんだろう。
てゆーかぁぁあ!!近いよォォォォオ!?高杉くん、それ近いんですけどォォォオ!? 女の子と高杉の距離がァァァァァ!!あと…10cm…9、8…7、6、5…
「ちょぉっと待ったァァァアア!!」
気がついたときには隠れていたくせにバサッと飛び出してしまう。アホか、私は。 高杉は喉で笑っていたから多分、私がいたことに気づいていたんだろう。
「な…なによ、アンタ!邪魔しないでよっ!」 「え、ぁ…さーせんしたぁ」 「さーせんじゃねェだろ。てめぇ何しに来たんだ」 「何しに来たんだじゃねェよ!お前探しに来たんだよ!!授業サボるな、私が怒られる。あの甘党にチョコパフェを奢らなくてはならないハメに…」 「別にいいだろ」 「よくねーよ!私の全財産10円だぞ!?分かるか、この苦しい生活がァァァ!!」 「お前んち、金持ちじゃねえのかよ」 「空はね。空はほか顔とかいいじゃん。だから金が入ってくるの」 「意味わかんねェ」
高杉がもしもだけど女の子とキッスしようとしてたのだったら、私はとんでもない邪魔者だ。 だけど、なぜだか今私の気分は最高。ノリノリだ。 最低だろうけど、二人の妨害が出来たことが最高に嬉しい。 私は悪役かぁ!?
「晋助、なによこの女」 「はぁあ!?アンタこそなんなんですかァ!?私は高杉さんのクラスメイトでありまして、高杉さんのえーっと…執事、みたいなやつなんです!」 「し…晋助はあたしのものなの!あたしの彼氏なの!アンタみたいな不細工が晋助と仲良くしないでよ!!」
パチン!!と勢いよく叩かれた頬。そこは真っ赤に染まっていく。 最悪だ。私なにもしてないのに。ただ二人の邪魔しただけなのに……。
「先輩、俺ァ先輩のこと彼女だと思ったこと一度もねーし、俺ァものじゃねェから。次こいつのこと殴ったりしたら…」 「…っ晋助の馬鹿ッ!!」
高杉の目つきにおびえたのか知らないけど、女の子は走ってその場から去っていった。 私は頬をすりすりと撫でて血の味がする口の中を水ですすいだ。 自分で女の子に変なこといったくせに、返り討ちにあって…馬鹿みたいだ、本当。 私は一体何がしたかったのかもわっかんないし、高杉が私を助けた理由も分かったもんじゃない。
「ククッ…こりゃあ随分と派手にやられたなァ」 「うっさいなぁ、さっさと教室戻れバカ杉。だいったい、なんで私がこんな目に合わないとなんないんだよ、もう。イライラするぅぅ…」 「ああ?自分で来たくせになに言ってんだ、てめー」 「あの女の子とどういう関係なの?彼女じゃないとか言ってたけどさ、なんかめっちゃ顔近かったし。思いっきりチッスしようとしてただろ!」 「…なんだお前ェ、嫉妬してんのかァ?」 「ぬぁ…あ!?」
顔がみるみる赤く染まっていく。 嫉妬ォ!?嫉妬ってあの…えぇ、嫉妬ォ!?嫉妬がよく分からないわけじゃないんだけど、えぇ!? 私が嫉妬!?誰に。なんで。まさか、高杉のことが好きだからーとかそういうわけないよ、ね…?
「それはないんじゃないかな、うん」 「じゃあ…」
ぐっと高杉の顔が近づいてきて、ギュッと目を瞑る。 やばい…!またキスされるぅぅぅう!! そう、思ったとき。ぽん、と頭の上に大きな手のひらが乗っていて、それが高杉のものだと分かるまで時間はかからなかった。
「ま、お前じゃ俺の彼女はムリだな」 「…お前ェの彼女なんかなりたかねーよ、ブァァァァァカ!!」
私は高杉のことが好きなのかもしれない。
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