>>families 1/6




喪中につき、しばらく営業を休ませていただきます。定食屋親父
と書かれた紙ぺらが貼ってあるお店。なぜか私たちはそこに集まっている。なんでも葬式らしい。土方さんはこの店の常連で、よく犬のえ…――土方スペシャルを作ってもらって食べていたらしい。


「おい、紅葉。お前いま完っ全に犬のえさって言いそうになっただろ。おい、だよな。おい!」
「さあ、何のことだか私にはさっぱり分かりません。」
「てんめえええええ!」
「葬式なんだから静かにしてくだせェ、土方さん。子供じみた紅葉でさえ静かにできるのに、土方さんは静かにできないんですか?」
「子供じみたってなに!?背のせい!?」
「うっせぇよ!元はといえば親父が…親父が死ぬからァァァァァ!!」


いきなり泣き出した土方さん。私も横にいてびっくりするくらい大声で泣き始めた。こんな土方さんを見るのははじめてだ。
…トッシーのようだ。


「なんで…なんでこんな早く……なんでなんだァァァ!!まだツケが残ってるだろーが!!俺ァ…俺ァアンタに返さなきゃならねェ恩(ツケ)がまだたくさん…たくさ…」


子供のように叫ぶ土方さん。総悟は相変わらず何も気にしていないようで、表情が全然変わっていないけど、近藤さんはなんだこいつ、みたいな目をして土方さんの肩にぽんと手を置いた。


「……トシ、落ち着け。御霊前だぞ。」
「お…親父ィ…たとえアンタの肉体が滅ぼうと……土方スペシャルの味は……永久に不滅だ!!」

「見知った顔が見えますけど…」


横で土方さんが叫んでるのはもう聞き飽きた。耳に入らないように…と思っている私の後ろでぼそぼそと声が聞こえた。それはほんっっっっとうに聞きなれたもので、今私が一番聞きたくない声だった。
土方さんも棺桶の前から立ち上がり後ろを振り向く。それに続いて私も近藤さんも総悟も。バチっと目が合った相手はもちろん毎度毎度の…――。
土方さんと銀さんがぺこりと同時にお辞儀をした。


「…………惜しい人を失くしたな」
「…ああ、江戸の宝が……また一つ消えたな」


どうやら銀さんもこのお店に来てたみたいだ。
多分…銀さんは宇治銀時丼だったか宇治金時丼だかを食べていたんだろ。


「………何?いつになくおとなしいんですけどあの二人が…」
「よほどこたえてるようアルナ」
「あの味覚バカ、二人の数少ない理解者だったようだからな。今夜ばかりは俺達もあの二人に倣ってしめやかに親父さんを送ってやろう」
「しめやかに送りたいですけど、味覚バカ呼ばわりしていいんですか。アンタはお妙さんバカでしょうが。」


みんなが口々に言いたいことを口にすると葬式が始まるようで、床に正座しはじめた。お坊さんの適当なお経が聞こえる。
なぁ〜にがサンバイザーだよ!ちゃんとやれよ!
ポクポクと木魚の音に耳を傾けてふと棺桶の方をみると……
あ、あれ…?なぁにあれ。げ、幻覚?いやいや、そんなことはない。断じてない。最近妙なもんが見えるとかそういうのないから。マジで。やぁ、でもなんか妙にリアル……。

や、え…?う、嘘だろおおおおおおお!?





prev|next





「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -