「みんなにお知らせがある。名前が転校することになった」


明日、お父さんの仕事の都合で転校することになった
ホントは転校なんてしたくない絶対に嫌だ
だって…好きな人に会えなくなっちゃうから


「名前まじアルか!?」
『ごめんね、急に…』
「謝ることなんてないのよ…。寂しくなるわね…」
『妙ちゃん…。』
「引っ越したら手紙とか書けよ。連絡するからな」
『うん、もち!!』


みんな、優しく声をかけてくれる
だけど、私の好きな人は声をかけてくれない
じっと私の方を見つめているだけ


「んじゃ、今日は終わり。解散」


銀八の号令でみんなが帰る。
私は教室に残って机を見ていた


ガラ


急に教室のドアが開いた
ドアのほうを見ると私の好きな人…沖田君がいた


「本当にいっちまうんですかィ…?」
『うん…ごめんね、もっと遊びたかったのに』


本当は行きたくなんかないのに
どうしても行かなきゃならない


だから最期に


『沖田君、今夜暇?』
「暇だけど…」
『じゃあ私の家の近くの川来てねっ!!時間は8時で。』


最高の贈り物を…





夜8時…
本当に来てくれるかな…
心配と期待を胸に私は川へ向かう


『ハァハァ…』
「遅い」


いた!!


『来てくれたんだ…』
「そりゃな」


嬉しくて涙がこぼれそうだった
だって沖田君が来てくれるとは思わなかったもん
私がゴロンと川原に寝転がると沖田君も私の横に寝転がった


『見て見て』
「なんですかィ?」
『アレがデネブ、アルタイル、ベガ』
「は?」
『星だよ、星。』
「あぁ…」
『夏の第三角形。私、あの星大好きなんだ』
「へぇ…」


私が勝手に呼び出して私だけが喜んでる
自己中だな、私


『ベガとアルタイルはね。織姫と彦星。一年に一回しかあえないんだよ?』
「知ってまさァ」
『私も一年に一回は戻ってくるからそしたら……会おうね』
「…了解」
『私からのプレゼント。星空。今はまだこれだけしか渡せないけど来年はもっとすごいの見せてやるよ!!』
「楽しみにしてまさァ」


こんな日がいつまでも続けばいいのに
一年に一回だなんて物足りなさ過ぎるよ…


「お前ェ明日何時に出発するんですかィ?」
『9時』
「了解」


何をするつもりなんだ、この人は


『じゃあ夜遅くにごめんね。また…来年』
「じゃあな」


私の家は沖田君の家と反対方向にある
私は自分の家の方へ
沖田君も沖田君の家の方へ
帰っていった


…結局好きだって伝えられなかったな……




次の日の朝
9時…
電車が来る
もうすぐ行かなきゃならない
行きたくないけど行かなきゃ…
お父さんを一人には出来ないもん…


「名前!!」


私が電車に乗ろうとすると後ろから沖田君の声が聞こえた


『沖田君…』


来てくれたんだ
だから昨日、出発時刻聞いたんだね


『…ありがとう』
「名前…俺ァお前が…好きなんでさァ」
『え…?』


ジリリリリと出発のベルがなる


「ほら、もう行きなせェ。言いたいことは全部言った」


沖田君に押されて私は電車に乗る
すぐにドアがしまってしまう
ドア越しで聞こえないかもしれないけど私はちゃんと言った


『私も好きだよ』


口パクでも分かるようにでっかい口開けて言った
会えなくても大丈夫…
また来年一緒に星を見に行くんだから



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -