「チッ…」 「おーい、チッてなんだチッて」 「別に、なんでもなっ…」 立ち上がり、歩こうとしたら足に激痛が走った。走ってる間にひねったか、斬られたか。どっちにしろ私がここから立ち上がって歩けるような状態じゃない。 「おいおい、大丈夫かよ姉ちゃん」 「別に…。大丈夫よ、これくらい」 「とりあえず、うち近所だし寄ってくか?」 本当なら「金のない家になんか行きたくない、近寄るな」と言ってやりたいところだけど、今はそんな事も言ってられない。とりあえず銀髪侍に肩を貸してもらって立ち上がった。今、私が刀でも持ってたらぶんぶん振り回してると思う。…よかったね、銀髪さん。私が刀持ってなくて。 「姉ちゃん、名前は?」 「未来、アンタは?」 「俺ァ、坂田銀時だ」 「へェ…変わった名前」 「何とでも呼べ」と言ったから私は頭の中で何て呼んでやろうか考えた。万事屋銀ちゃんってくらいだからみんなからは銀ちゃんって呼ばれてるんだろう。 「アンタ、どうして私のこと助けたワケ?後悔するわよ、」 「あ?目の前で殺られそうになってる奴がいて、放っとけねぇだろ普通。しかも、こんなに可愛いのによ〜」 「…アホか。まあ、後悔しないようにね」 「なにお前。照れてんの?」 「照れるかバーカ」 万事屋銀ちゃんとでかくかかれた看板。その下にはスナックお登勢という店があった。私は階段を登り万事屋の中へ入る。 「新八ィー、客だ客ー。包帯持ってこーい」 「誰が客だ」 「お客さんなのに包帯ですか!?」 銀時は「まあまあ、」と言って手をひらひらと動かした。奥から出てきた眼鏡の男の子が私のことを見て驚いていた。何がそんなにおかしいのかわかんないけど。 「ぎぎぎぎ…銀さんが女の人拾ってきたァァァア!!神楽ちゃん大変だよ、銀さんがっ!」 「バッカ、てめぇ新八ィ!俺がこんな奴に惚れるかァ!!」 「うわ、ホントアル。ちょっとさっちゃんに言ってくるヨ」 「やめてェェ!神楽ちゃんそれだけはやめてェェ!!」 「…ッうっせェェェェーーーー!!」 あまりのうるささに痺れを切らした私はぎゃーぎゃー騒ぐ三人を怒鳴りつけた。こっちは怪我してるってのにうるさすぎる。あの馬鹿は何か言われたと分かったら私から肩離して私は一人でへたり込んじまうし。 「す…すいません、怪我人なのに騒いじゃって……」 「あっ…こちらこそすいません」 「今、包帯持ってきますから!」 新八くん、だっけ?その子は割りといい子らしい。この店のパシり、と言ったところだろうか。忙しそうに動く新八くんはなんだか可愛らしかった。…そこの馬鹿と違って。ピンク色の髪の毛をした女の子は白い肌に酢昆布という変な組み合わせで私を出迎えてくれた。その後ろにはでかい犬。でかすぎて犬と言っていいのか分からないけど。 「銀ちゃん、そいつ何アルか」 「拾った。なんか怪我してたから」 「拾ったとか私を物みたいに言うな」 「こいつ神楽。んで、あっちの眼鏡が新八で、この女が未来な」 「よろしくネ、未来」 「よろしく…神楽、ちゃん?」 「ちゃんなんていらないアル。神楽でいいヨロシ」 「か…神楽!」 「うん!未来、可愛いアル!!」 「そ…そう?」 面と向かって言われると照れる。新八くんが包帯を持ってきてくれて、怪我した方の足を出すと丁寧に包帯を巻いてくれた。 「おーい、銀さんのこと忘れないでねー?」 …あ、忘れてた。 「それで?未来はこれからどうするワケ?」 「…どうするもこうするも…。家なんてあたしにはないから、ホームレス」 「ええッ!?未来が路上生活ぅ!?ダメアル、危ないネ!未来は私が守るネ!!だからここにすむヨロシ」 「ちょおおおっと神楽ちゃぁぁぁん!?なに勝手に決めてるワケィ!?」 たしかに、その優しさは嬉しかった。でも、私としてはこんなおんぼろ屋敷よりも豪邸に住みたい。今回は神楽ちゃんの優しさに免じて許してやる。ってか、仕方ねえ。そうでもしないと生きていけないし。 「いいの?」 「…チッ、仕方ねえな。ちょっとだけだぞ」 ぽりぽりと頭をかきながら奥へ入っていく銀髪を見て、神楽ちゃんと顔を合わせて笑いあった。 第一印象は、 神楽…いい子、可愛い。 新八くん…いい子、地味。 銀髪…つかみどころのない奴 |