うちのクラスで一際目立つ存在。いつも教室の隅っこで一人で読書してる奴。友達はいないらしい。
普通なら目立たないはずの女が、俺らのクラスじゃ目立つのは多分このクラスには地味じゃない奴が多すぎるからだ。山崎とか志村弟とかは別として。
今日も一人で読書して、「私の酢昆布返すネェェ!」と叫んでる神楽と銀八を鬱陶しそうな、だけどどこか羨ましそうな目で眺めていた。
特に話すこともなかったし、別に話したくもなかったから話したことは一度もない。ただ、たまに授業中目がちらちらと合うのが気になる。目が合ってからは顔を少しだけ赤くして、それからまた授業に戻る。それが何を意味しているのか俺には全く分からなかった。


「おい、もう下校時刻とっくに過ぎてんぞ。さっさと帰れ」

「あっ…すいません!下校時刻が過ぎてるのは分かってたんですけど…あの…ちょっとなくしものをしてしまって……」

「だったら、俺も一緒に探してやる。どの辺でなくしたんだ?」

「け、結構ですっ!風紀委員の見回りですよね?だったらまだきっと終わってないはずです。先にそちらを終わらせてからでいいです。もしかしたらその間に見つかってるかもしれないし…」


まただ。顔を赤く染めて目を逸らす。別に気にならなかったから、言われたとおり教室を出た。
風紀委員の見回りだってなんで分かるんだ?俺は何も言ってねーぞ?
少しして見回りが終わって、志村姉に殺されかけてる近藤さんを見つけて保護して、俺の自転車に嫌がらせしようとしてる総悟を追い掛け回して、ミントンしてるザキに制裁を加えてから、俺は教室へ戻った。
そこにはまだ地味子の姿があった。そわそわと机の周りをウロチョロしてる。よく見れば手には何か持っている。俺は気にせず教室の中へ入った。


「探し物は見つかったか?」

「え…あ、はい!見つかりました!ありがとうございます」

「だったら、なんでまだ教室にいんだ。帰れつっただろ」


手に持っていたものを俺に見せないようにと背中で隠してある。一体何がしたいんだ、この女。
バチッと目が合った瞬間にカァァァと一気に顔を赤く染め上げる地味子。しばらく沈黙が流れ、下を俯いた。


「あ、あの…!」


地味子も悪くない


授業中にやたらと目が合った理由が今、分かった。



(20110313/藍田雛)


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