「ねえねえ、名前ちゃん」
「なぁに総ちゃん」
「もし大きくなったらさ…僕と……」



頭の中で響く声と同時に俺の耳の近くで雷のように響いたその声が、同一人物のものだなんて今でも俺は信じられない。
いつからこんなに凶暴な女に成長したんだこいつは…


「おい起きろコラ!今日私と見回りなんだから、起・き・ろ!怒られるのは私なんだぞ、絶対いつか殺してやるからな土方と一緒に!」


布団を引っぺがして俺のアイマスクを思いっきりぶんどる名前。
これが女だってことさえもが信じられない。女なのに近藤さんより強い。俺と同じくらい強い。それが女…?メスゴリラの間違いだろ


「早く着替えろ、さっさと仕事済ませて遊びたいの」
「嫌でさァ、お前と巡察いくのも嫌だし遊ぶのも嫌。一人で行ってきてくだせェ」
「なに?なにアンタ沈んでんの?」
「沈んでねェや」


明らかに沈んでるだろ。と付け加えた後、名前は俺の部屋から出て行き、襖越しにでかい声で言った、


「早く着替えろー!お前がなんと言おうと巡察行くからなァ!」


静かに舌打ちして、すぐに着替える。
なんで名前と巡察行かなくちゃならないんでィ、土方マジ殺す。絶対殺す。ぶっ殺す。何も残らないくらいズタズタにしてやる。
どうせこいつの遊びっていうのも、巡察っていうのも、目的は違う。巡察なんて口だけで、サボりだろ。


「着替え終わった」
「そ、私はずーっと待っててあげてるんだからそろそろ出てきたら?」
「面倒くせェ、一人で行って来いつってんだろ」
「怒られるの私だって言ってるじゃんか。だからお前も来いつってんだよ」
「勝手に怒られろ、そして死ね」
「お前が死ね」


結局は名前に部屋から引っ張り出されて嫌でも巡察に行くしかなくなった。
道を並んで歩く俺たちは恋人に見えるだろうか?いや 見えないか。見られたくもない。
こんな大嫌いな奴と恋人だなんて吐き気がする。土方の次に嫌いだから。


「あ 銀ちゃーん!」
「おう、名前。どうしたの総一郎くんと二人で。デート?」
「んなワケないっしょー私が浮気するとでも?」
「そうでさァ、こんな土方の次にクソみたいな奴と勝手に恋人にしないでくだせェ」
「誰がクソだコラァ!」


旦那に会っただけで声色が変わる。顔も変わる。笑顔も変わる。
旦那は特別なんだ。俺は特別じゃない。
胸糞ワリィ…


「先、帰るぜィ」
「は?なんで?」
「気分悪くなった」
「ハァ!?」
「お前の顔がキモ過ぎて」
「名前の顔はキモくねーだろ。どっちかってーと可愛いだろ」


頼むから、そんなにイチャイチャしないでくだせェ


あの日の約束を俺はまだ覚えてる


「もし大きくなったらさ…僕と……けつこんしない?」
「フフッ、けつこんじゃなくてけっこんでしょ?」
「あ、そうだ!けっこんけっこん!」
「いいよ、総ちゃんとなら」





(20110107/藍田雛)


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