ジェラシー
何よスクアーロったら。せっかく私が優しくしてあげようと思ったのに!…やっぱりやめようかな。優しくするなんて性に合わないし。だけどずっとこのままじゃ、呆れられる一方だ。もう!どうしろって言うの?あ、駄目。またやっちゃった。イライラするとつい爪を噛んじゃう。
「なまえ、血が出ているぞ。」
「うおっ!レヴィいたの?」
「今来たのだ。見せてみろ、簡単な処置くらいなら…」
一人だと思った談話室。声をかけられてふと我に返る。今更だけど、じわりと血の滲んだ爪は痛かった。手を差し伸べたレヴィは、その掌に私の手を置けと言っているのだろう。
「いいよ。このくらい、スクアーロに頼…」
スクアーロに頼めば済むから。全くその通りだ。だけど私は今それに悩んで爪を噛んでいたのであって、スクアーロに頼んでしまえば爪を噛んだ意味すらなくなってしまう。
「…レヴィに手当てさせてあげるよ。」
「お前な…」
眉を寄せたレヴィなんて見てないふり。態と視線を逸らして、差し出された手に指を置いた。
「ゔお゙ぉいレヴィ!」
その声が聞こえたのは、レヴィが絆創膏を取り出す前。指を預けたまま、扉に顔を向ければスクアーロが。
「待てスクアーロ!これは誤解だ。見ろ、なまえが怪我をしていたのだ。」
「あ゙あ゙?…テメェの名前呼んだだけだろぉが。」
明らかにご機嫌斜めな様子。レヴィも困惑してるけど、一番困ってるのは私だぞ!しかし空気を読みとり、やっぱり手当てしなくていいよとだけ言ってレヴィから離れた。
「スクアーロ、用がないなら俺はボスのところに…」
「勝手に行けぇ。」
レヴィは舌を一回鳴らして談話室を出ていく。レヴィのこと呼んだくせに、用ないんだ…スクアーロと二人で取り残されるなんて気まずいなぁ。
「なまえが何も言わねぇなんて、イライラする。」
「いや意味分かんないんだけど。」
先に口を開いたスクアーロは矛盾を述べた。“俺に頼むな”私にそう言ったのはスクアーロだ。腕を組んで私を睨むその顔を殴り飛ばしてやりたい。
「俺に頼むな。俺以外にも頼むな。」
「死んでこいカス鮫。じゃあどうしろって言うの?」
「なまえが死んでこい。自分でしろって言ってんだぁ。」
なんだって?馬鹿言ってんじゃないよ。やっぱり殴り飛ばしてやる。私は大股でスクアーロに近寄り、腕を思い切り振り上げた。ばちんって大きな音が鳴る予定だったんだけど、このカス鮫はそれを受け流しやがった。
「自分で出来ねぇなら、俺に頼め。」
「…え、あ、…うん。」
俺に頼むな、俺以外にも頼むな、自分で出来ないなら俺に頼め…変なトライアングルが私の頭の中でグルグルと回ってる。スクアーロが言ってること、よく分かんないよ。
だけど、人様はそれをジェラシーと呼ぶらしい
「爪、痛い。」
「見せてみろぉ。」
091125
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