元気?今度日本に帰ってくるんだってな!もっと早く連絡しろよ。今仕事で地方に飛ばされてんだけど、なまえに合わせて俺も戻るから。久々に飯一緒に食えるの、楽しみにしてる。

「(…修二?)」

まだ空が薄暗い頃、スクアーロは小さな音で目を覚ました。音の原因は枕元に置かれた携帯電話。重い瞼を持ち上げる気にはなれず、手探りで捜し当てて受信された内容を確認する。ブルルと短い振動だったことから、メールだとは分かっていた。しかし本文は自分に宛てられたものとは言い難く、送信者の欄には「修二」という知らない日本人の名がある。スクアーロは目を擦り、改めて携帯電話の本体を見た。

「(なまえの、か。)」

メールの本文にもあったなまえ、それは今スクアーロの隣で寝息を立てている人物の名である。スクアーロと同じ機種が欲しい!と言って、なまえがスクアーロの持つ携帯電話と色違いのものを買ってきたのはまだ最近のこと。慣れた形や質感から、スクアーロは自分のとは違うブルーの携帯電話を手に取ってしまったのだ。

「…なまえ。」

スクアーロはなまえの肩を揺らした。兄弟か何かだろう、そう思いたい。しかし以前なまえは弟が欲しいと言っていた。兄だけではつまらないんだとも。その時聞いた兄の名は、修二ではない。なら、誰だ?スクアーロは顔にこそ出さないが、心臓に穴が空いたような気持ちだった。

「んんっ…す、くあ…ろ?」
「修二って誰だぁ?」
「…しゅ、うじが、どうしたの?」

まだ半分夢の中にいるなまえは平然と修二の名を吐く。スクアーロは沸き上がる嫉妬の心を押さえきれず、眠そうに身を捩るなまえを自分の下へと引きずり込んだ。

「うわっ!びっ、くりした…スクアーロ?」
「俺は“誰だ”と聞いたんだぁ。」
「え?な、何のこと?」
「とぼけんじゃねぇ。」

手首を強く握られた拍子になまえは完璧に目が覚めた。どうやら無意識に返事をしただけで、話の内容はさっぱり覚えていない様子。半分夢の中だったのだから、それは大して不思議でもない。しかし今のスクアーロには、それがとぼけている様にしか見えなかった。

「ちょっと!痛いよ、離して!」
「なまえ、お前来週日本に帰るのは止めろ!!」
「急にどうしたの?親の顔見たらすぐ帰ってくるって言ったじゃない…」
「親じゃねぇんだろ?本当に会いたいのは。」

なまえが次の言葉を発する前に、スクアーロが乱暴に唇を押しつける。言い合ったって埒が明かない、そう言いたげだ。

「ぁ んっ、あ…」

唾液の音を態と立て、スクアーロはどんどんなまえの口内を犯していく。次第になまえもそれに流されてしまい、力の入らなくなった腕をスクアーロの背中に回した。未だ鳴り止まないちゅくちゅくという水音が、厭に響く。

「ゔお゙ぉい、一つ忠告だぁ。優しくなんざしねぇ、理由は自分で考えろぉ。」
「え…な、なんっ!ん あっ」












「…酷い、スクアーロの馬鹿。」
「あ゙ー、悪かっ…いや、悪くねぇ。俺は悪くねぇぞぉ。」

ぐったりとベッドに沈んでいるなまえ。彼女はまだ自分で考えろと言われた理由、つまりご機嫌斜めな鮫の心内を知らずにいた。

「だから何だって言うの!?」
「これだぁ。」

スクアーロはずいっとブルーの携帯電話をなまえの前へ突き出す。ご丁寧に問題のメール画面を開いて。

「ん?修二からメール着てたんだ。」
「だから!…誰だよ、修二って…」
「バカ兄貴。」
「ゔお゙ぉい!お前の兄貴の名前は修二じゃねぇだろぉ!!」
「一人目はね。」

スクアーロはその言葉の意味をすぐに理解出来ず、数秒間フリーズ。その後やっと口を動かした。

「ってことは…なまえは三人兄弟かぁ?」
「言ってなかった?長男はこの間教えたよね。次男がこの修二。」
「二人いるなら先に言え!!」
「え〜別に一人言えばいいじゃん。つーか二人してシスコンだし、マジ鬱陶しいんだけど。スクアーロ適当に返信しといてよ。」

そう言ってなまえは再び睡眠をとろうと布団に手を伸ばした。しかし唖然としているスクアーロの姿が目に入り、クスリと笑う。

「スクアーロってば嫉妬したんだ。大人気ないね。」
「し、てねぇよ。」
「じゃあさっきの台詞をもう一度言うよ。“酷い、スクアーロの馬鹿”」
「……悪かった。」

勝手に勘違いし、苛立ち、荒々しく抱いた。その事実をスクアーロは後ろめたく思っていた。謝ったのは、大人気なく嫉妬していたことを認めたのと同じ様なものだ。

「それと、メール勝手に見ちまったのも、謝る。」
「そんなのいいのに。」

大人の雰囲気を放つスクアーロが、子供のように嫉妬してくれたこと、素直に謝ってくれたこと、なまえは全てが嬉しくて、本当に惚れて正解だったと痛感した。一方スクアーロは、こんなに惚れ込んでしまっていたとは…と内心苦笑せざるを得なかった。




―その後―
「あー早く返信しなきゃ…」
「んなもん後でいいだろぉ?」
「駄目なんだよ。シスコン野郎だから、今頃“なまえは男といるに違いない”って騒ぎ立ててるよ。」
「間違っちゃいねぇがな。」
「仕方ないな…スクアーロ、今回のこと許す代わりに、来週は一緒に日本ね。兄貴に上手いこと説明してよ。」
「ゔお゙ぉい!どうして俺が!」
「いいの?バカ兄貴のせいで彼氏にメチャクチャ激しくヤられちゃった〜って家族に公表するかもしれないのに。」
「…お前に恥はねぇのかぁ?」
「うん。」

日本にて、なまえの兄二人がスクアーロに襲いかかったのは言うまでもない。



090807


suim様との相互記念に作らせていただきました!その素敵サイト様へはリンクから飛べるようになっています^ ^

桜様へ
話が長くなってしまって申し訳ありません><しかもベタな兄弟オチorzご希望に応えられていない気しかしません←
そして男の名前が「修二」しか浮かばなかった…次男だから「二」を付けようという安易な考えです。ちなみに長男は「裕一」とかでいいやと思ってました。平凡万歳☆
ヒロインのご家族皆様マフィアだと思ってください(笑)
それでは桜様、相互リンク本当にありがとうございました♪これからもよろしくお願いします!


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