大まかな方向性は決まった、否、決まってしまったのだ。だが気がかりだってたくさん残る。そりゃそうさ、なんせ急すぎだ。私はここの人達に聞きたいことがたくさんある。私の滞在する予定だったホテルは?あそこに必要な荷物を全て預けているんだぞ。あとパスポートはどうする?ただの観光で来たのだから、そんなに長く滞在出来るはずがない。

「ゔお゙ぉい!開けるぞぉ。」
「返事を待たずに開けたら駄目じゃないですか、スクアーロ、さん。」
「あ゙?気にすんな。ほらよ、お前の荷物だ。確認しろ。」

え、あ、本当だ。突如部屋に押し入って…基訪れたスクアーロさん。その手から投げられた大きな旅行バッグは紛れもなく私の物。いったいドコから?そりゃホテルからなんだろうけど、どうやって…ああ、何か聞きたくないな。私みたいな一般人が唖然とするような裏通路があるんだきっと。ホテルを買収した、とか脅した、とか脅したとか脅したとか。

「…なんだその顔。」
「いえ、別に。」
「脅してぶん捕ってきたわけじゃねーぞぉ。」
「やっぱり脅し…え!違うんですか?」
「裏から手ぇ回しただけだ。」
「…変わらないです。」
「滞在期間だとか、パスポートのことも手は回してある。」
「…方法は聞かないでおきますね。」

はぁ、と肩を落としつつも中身の確認。よかった、たぶん全部ある。帰りのチケットも買ってたけど、これはもういらない。衣類の替えと海外では使えない携帯電話、念の為に持ってきたけど、やっぱり必要なさそう。あと、あとは…

「足りない物はルッスーリアと買いに行けぇ、気合い入ってたぞぉ。」
「えっ!」

やっば、お金スられたこと忘れてた!一番必要な物が足りない…相談したいけど、流石に情けないよね。旅行に来てたくせにお金がないなんて。どうしよう。

「ほらよ。」
「…カード?」
「金、持ってねぇんだろ?」
「!あ、えっと、でもこれ…」
「ボスからだ。施しだとよ、貰っておけ。」

うう、ザンザスさん顔に似合わず優しい!あ、思わず涙腺が…でも足りない物なんてあるかな?こうして日本から持ってきた必要最低限の物は無事だし、借りた部屋には充分すぎる程に家具や電化製品が揃ってる。流石にルッスーリアさんが用意してくれたお姫様部屋は落ち着かなくて、もう少し地味な方が好みだと話したところ、残念そうな顔をしながらも家具カタログを取り出し、好きなものを選ばせてくれた。うん、やっぱりこっちの方が落ち着く。ってそうじゃなくて、だからつまり、今必要な物は全て揃っていて何不自由なく生活出来るのだ。

「しばらくは使わなくていいかも。」
「買い物くらい付き合ってやれぇ。あいつ、お前と買い物に行くって楽しみにしてたぞぉ。」
「…そう、なんだ…」

何か嬉しいな。怖い人達ばっかりだと思っていたのに、友達みたいじゃん。あ、ルッスーリアさんだけね。他の人はまだよく分からない。このお兄さん、スクアーロさんのことも。

「なまえちゃあーん!お買い物に行きましょー!!」
「はい!今行きます。」

ノックの音とルッスーリアさんの声が廊下から響く。ほら、やっぱりすぐ開けちゃうのはスクアーロさんだけだよ。

「早いな。」
「じゃあ、行ってきます。」

まだまだ分からないことだらけ。ここの人達のことも、これから先のことも。けど、大丈夫。たぶん、きっと。



stage5 end



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