ザンザスさんの言う通り、私ってホント馬鹿。アルコールで一度失敗してるじゃないか…そんなこと、たらふく飲んだ後に言ったって意味ないけど。

「なまえはなかなか飲めるようじゃねぇか。」
「やだなぁ。ザンザスさんが飲ませてるだけですー。弱いの、ですよ?私。」

あー失敗ってなんだっけ?してないよ。うん、してない。だってお酒飲むと楽しいし、怖いものなくなっちゃう。ザンザスさんもちょっと酔ってきたみたい。私の倍以上飲んでるから、当然かな。

「あのカスなんざ本当に忘れちまえ…どうせ別れが辛くて逃げたんだろう。」
「それなら、嬉し。私との別れ、惜しんでくれて…」
「それだけで逃げ出すようなカス、捨てた方がマシだ。」

あ…ザンザスさんの手。私の頭を、頬を、首筋を優しく撫でる。お酒飲んでるからかな。触られたところが凄く熱い。

「や、熱いです…から、止めてください。ザンザスさ…」
「乗り換えてみるか。俺に。」
「…え?」

うわ、ちょっと酔い冷めたわ。嘘でしょ?うそうそ!これヤバイかも。じりじりと迫るザンザスさん。ソファの上は逃げ場所が少なくて、両手はすぐに捕まえられた。それだけならまだしも、腹に跨られ、体勢的にはかなり危険な状態。

「やっ、やだぁ。重いっ、嫌っ!」
「いい声だ。もっと鳴いて聞かせてみろ。」

どうしよう。力で適うわけない…助けてって叫んだら誰か来てくれるかな。あー私意外と暢気かも。キャーキャー声出してるけど、内心はこんなにのんびりしてる。お酒のせいかな。けど、嫌って言うか、駄目なんだよ。ほら、私ってスクアーロさんのだし。…そうだ。スクアーロさんの、なんだった。

「っ。スクア…ロさん、じゃないと、や、やっな、の。」
「だとよぉ。ざまぁみろ!こんのクソボス!!」

…あれ?今の声って、絶対、誰がどう聞いてもあの人だよね。ちょっと待って。これって浮気現場になるのかな…声の方向からして扉付近にいそうなんだけどさ、怖くてそっちを向けないんだけど。

「帰ってくるなカスが。」
「あのなぁ…とりあえずそこをどけぇ!そこは俺の特等席だぁ。」

わ、ザンザスさんが素直…有り難いことにあっさり退いてくれた。これは浮気とカウントされなかったようなので、安心してスクアーロさんの顔を見ることが出来る。

「ゔお゙ぉい!つい最近似た様な状況で俺に襲われたばっかりだろうが!!学習しろぉ!」
「えええ!ソファに押し倒されたこと以外一致するとこないですよ!」
「酒飲んで押し倒されてんだろぉ!」
「す、スクアーロさんは、お酒飲んだ時、襲わなかったです!」
「俺とボスの忍耐力比べてんじゃねぇ!」

ちょっと普通過ぎる。スクアーロさん、この一週間がなかったかのように話すの止めません?どれだけ悲しかったと思ってんの。

「うるせぇ!酒が不味くなる。返してやるから、とっとと失せろ。」
「言われなくても、そうさせてもらうぜぇ。」

スクアーロさんはソファまでつかつかと足を進め、私を担ぎ上げた。米俵になった気分…運び方はもっとあると思うんだけど。ザンザスさんの部屋を出てすぐ、私は廊下で降ろされた。あ、酒瓶とか片付けてこなかったな…スクアーロさんと飲んだ時も確かそうだった。飲むだけ飲んで片付けないなんて、最低な女。

「相当酔ってるな…歩けるかぁ?」

認めたくないよ?認めたくないけど、私、酔ってる。けど歩ける。歩ける、のに、首を横に振った。その理由は、スクアーロさんに抱っこされてたいから…ってだけ。本当に最低な女。最低って言うか、欲深い女?

「そうか。なまえはこっちが好きだったよなぁ。」
「こっち?…うわっ!」

私の小賢しい作戦は成功?望み通りスクアーロさんは私を抱き上げてくれた。あの時みたいなお姫様抱っこ。うー胸が痛い!何これ、ときめきすぎってやつか!?ああ、久し振りに嗅ぐスクアーロさんの香水が心地良い。

「ん…いい匂い、がする…」

それをもっと感じたくて、スクアーロさんの肩に鼻を押しつけ、ぎゅうっと衣服の胸元を握りしめた。



stage34 end



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