「スクアーロ、遅いじゃない!」
「待ってたのかぁ?」
「王子が待つわけないじゃん。なまえからの要望なんだよ。どうせならみんないる時にってさ。」

二回説明するのは面倒なんだよ。本音はね。あ、ルッスーリアさんが用意してくれた紅茶美味しいー!クッキーも美味しそう…けどスクアーロさんも来たことだし、そろそろいいかな。クッキーは話を終わらせてからゆっくり食べよう。

「ここに来るまでにリングの話は聞きました。戦いのことも…まさか、沢田君って今マフィアなんですか?」
「前からマフィア。今はボスだぜ?俺らの大将とやり合って勝っちゃったし…十年前に。」

人は見かけによらないとはこのことだ。あの沢田君がザンザスさんに?しかも今はマフィアのボスだなんて…獄寺くんは、何となく分かるけど、山本君や京子ちゃんのお兄さん、それにあのおっかない委員長まで絡んでたとは!

「なまえはとんでもねぇ女だなぁ。どんだけ顔見知りにマフィアがいるんだぁ?」
「そんなつもりは…」
「ししっ、なまえもマフィアになる?なまえなら王子大歓迎なんだけど。」

冗談じゃない!そう言いたいけど、本職の人達の前で、特にスクアーロさんの前でこの職を嫌うような発言は控えたい。そうだ話題を変えよう。

「ところで、沢田君達もイタリアにいるんですか?」
「あの子達の拠点は日本よ。並盛にアジトが完成した時はお祝いを持っていったわ〜」
「並盛にアジト!?そんなのないですよ!!」
「王子無視すんなよ。つーか一般人に見つけられっこないじゃん。」

えええ!本当にあるの!?なーんにも知らずに生活してたんだけど…平穏だと思ってたのに、知らない間にマフィアの拠点になってたなんて。しかもボスの!そのボスは沢田君で、同級生や先輩もマフィアで…

「何だか…頭が痛くなってきました…」
「無理もねぇ。そういえば、最近まで山本武がいたぞぉ。」
「山本君がイタリアに…ですか?」
「もう帰国したがな。散々俺の部屋にケチつけていきやがった。」

あ、もしかしてあの洗濯物の箱って…山本君か!だから日本語!!うわーなんか凄くスッキリした。らしくないなぁとは思ったんだよ、うん。確かに山本君っぽい発想だわあれ。

「…なんだぁ?その満足そうな顔は。」
「い、いえ!何でもないです。」

そっかそっか。マフィアって映画の中の人だと思ってたけど、意外と近くにいるもんなんだね。意外すぎるけど。優しいの代名詞だった沢田君と山本君がマフィアか…

「その話はもういいじゃない。私はね、アナタ達の話が聞きたかったのよ。」

割って入ったのはルッスーリアさん。アナタ達って…私とスクアーロさん?うわーここで聞かれるとは…いや普通聞くか。けど今まで偶然って凄いねーって話だったんだからさ、続けようよその話!昨晩のことには触れないでー!!

「羨ましいかぁ?」
「うわ、その顔ムカつく…自慢?自惚れ?なまえ今からでも遅くないぜ。俺にしとけよ。アッチの方もこんな海洋生物よりイイって。」
「アッチだぁ?ガキが俺に勝てるわけねぇだろぉ。場数が違…」

分かる、分かるよ。スクアーロさんが“ヤバイ!”って思ったこと。そりゃ経験豊富でしょうよ。こんな色男で、危ない世界の住人なんだから。私は気にしてないけど、寝たばっかりの女の前で言うことじゃないよね。ああ、そんなことよりも普通に話がセックスに向いてることが気になって仕方ない。そっちに持ってかないでよ。恥ずかしい。

「ししっ。スクアーロ作戦隊長、失言?いっぱい女抱きました宣言だぜ。それ。」
「ベルったら、およしなさいよ。なまえちゃん、折角だからスクアーロの部屋に移る?ボスの話だと、もうすぐ日本に帰れるみたいじゃない。」

あ…そ、っか。私もうすぐ帰るんだった。ここからバイバイしちゃうんだ。忘れてたな。俺はいいぜ、なんて簡単に言わないで。いつまでもいられるわけじゃないんだから。一緒にいればいる程、辛くなる。

「なまえもいいだろぉ?俺の部屋に来い。」
「…はい。」

分かってるんだけどね。辛くなったって、目先の損得にハマるのが人だ。辛くなるまで一緒にいたいよ。

「何だよ…別れさせるチャンスだったのに。つまんねーの。」
「んもーベル、いつまでも拗ねないの!」

不機嫌そうなベルさんを見ながら、乾いた喉に紅茶を流し込んだ。言いたいことはまだあったけど、もういい。終わりにしよう。私はテーブルに手を伸ばし、丸いクッキーを口に入れた。



stage25 end



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