バァン、開いた扉は談話室のもの。上がった息を整えたくてソファへと進む。しかしそこには先客が二名。二人は驚いたように私を見た。
「あれーなまえさんじゃないですかー。」
「どうした、そんなに息を切らして。」
フランさんと、レヴィさん…意外な組み合わせだなぁ。二人を交互に見た後、フランさんの隣に腰を降ろす。ごめんなさいレヴィさん、今は一時的に男性恐怖症が発症してるんです。どちらも男性なら、少しでも可愛い子の隣がいいんです。
「ちょっと、体力作りでもしようかと思って。廊下でランニングを…」
「へー、ならいいんですけど。ミーはてっきりどっかのロン毛隊長に種でも撒か「元ネタはどこからですか!!」
「ベル先ぱ…間違えた、堕王子からでーす。」
ここの王子様は相当お喋りのようだ。スクアーロさんは関係ないですと嘘を吐き、後ろめたさから、私は口元を隠すように膝を抱えた。
「そういえば、これはお前の物か?テーブルにあったのだが。」
レヴィさんが取り出したのはイタリア語のテキストブック。こんなものを読むのは、ここでは私だけだろう。お礼を言ってから素直にそれを受け取った。勉強しようなんて思わなければ、こんなことにはならなかったのかもしれない。
「…元気ないですねーなまえさん。」
「やはりスクアーロが何かしたのか!?なら今すぐにでも奴を!」
「ちち違います!違いますから!」
立ち上がったレヴィさんを引き留めたものの、納得はしていないようで顔を歪ませていた。そしてその顔はフランさんの言葉でもっと歪むことになる。
「レヴィ先ぱ…間違えた、変態が行ったところでーロン毛隊長に適うわけないじゃないですかーミーなら大丈夫ですけどー。」
「なぬ!キサマが行ったところで返り討ちに合うのオチだ!」
「変態よりマシですー。」
おや?おやややや?確かこの二人も幹部ってやつだったよね。幹部って強いんだよね?それなのに、何、この会話。もしかして、さ…
「す、スクアーロさんって、そんなに強いんですか?」
「まぁ、認めたくはないがな。」
「本当はーヴァリアーのボスになるはずだった人らしですよー。馬鹿だから却下されたんじゃないですかー?」
「ボスが偉大すぎたのだ。スクアーロとてボスには適うまい。」
やっぱり。イタリアで再会した時、強いなぁ〜とは思ったけど、まさかそこまでとは。しかもレヴィさんの口振りからすると、スクアーロさんはこの部隊の実質No.2?ってことだよね。うわーそんな凄い人と私キス、しちゃったの?しかも押し返しちゃったよ…私を押さえつけておくくらい、簡単なはずなのに。
「それよりフラン、そろそろ…」
「はーい。分かってるんでーいちいちミーに指示しないでくださーい。」
同時に立ち上がった二人を見て不思議そうにしていたら、定刻に二人で部屋に来いとボスからご命令を頂いているのだとレヴィさんが説明してくれた。だからこの意外な組み合わせか…と私も納得。レヴィさんは早足で談話室を出たけれど、フランさんは出ずに、ニマニマと笑いながら私の耳に唇を近づけた。
ミー見ちゃいました
なまえさんとー隊長がここで抱き合ってるとこー
「レヴィ先輩と会う前だったんでー黙ってた方がいいかなーって思ったんですけどー」
私は顔を真っ赤にさせて、コクコクと頷いた。
stage15 end
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