気づけばいつかの様にベッドの上だった。そう、ここは用意してもらった私の部屋…じゃ、ない!?え、ここどこ?周りを見渡してみても見慣れないものばかり。カーテンで隠れた大きな窓、その前にあるこれまた大きなソファ。それに並ぶテーブルには白い冊子が雑に置かれ、ノートパソコンらしきものを覆っていた。あ、目が痛い。腫れてるのかな…泣いちゃったし。…泣いて、抱きしめられて、それから、…どうしたっけ?覚えてないけど、あれ、もしかしてここって。

「その目、ひでぇなぁ。」

予感が的中しそう。扉を開け、この部屋に入ってきたのは紛れもなく、

「スクアーロ、さん…!!えっ、あ、あの、ふっ「折角冷やしてやってたのによぉ、タオル落としやがったな。」

ふと横を見れば濡れたタオルが落ちていた。手に取ると、それはもう冷たくなかったけど。問題はそこじゃないよ、今言おうと思ったのに、スクアーロさんに遮られてしまった。お願いですから、然も当然のようにその肉体美を晒さないで下さい!目を奪われて見入ってしまった私は、変じゃない、変じゃない!

「ふ、服を着て下さい!!」
「あ゙ー…悪い。風呂に行ってきたところだった。」

え、何?そんな話になってたなんて私聞いてないんだけど。ちょ、っと待って…さっき私が泣いて、抱きしめてくれたところまでは、うん覚えてる。その後何かあったの?

「あ、あの…ここってやっぱり…」
「俺の部屋だぁ。他にも部屋はあるがな、ここは寝室として使っている。見れば分かるだろぉ。」
「ス、クアーロさんは何故お風呂に…?」
「さっきは任務帰りでなぁ。まだシャワーを浴びてなかっ…ああ、別に疚しい気持ちがあったわけじゃねぇ。なまえが、泣くからだぁ。」

“泣くからだ”その言葉はぐさりと胸を刺した。やっぱり迷惑をかけたんだ、私。心は途端に負のオーラを放ち出す。そしてハァと重いため息を一つ。そっか、スクアーロさんが部屋で休ませてくれたのも、私が泣いて手に終えなかったからなんだ。それだけなんだ…って、何落ち込んでるんだよ私!大人の関係を期待してたなんて、そんなことある訳、ない。

「期待でもしたかぁ?」
「!ゥえ!?(うわ、声裏返った…)」
「冗談だぁ。」

スクアーロさんは笑いながらソファに置かれていたシャツに袖を通し、私に背を向けた。そしてついでと言わんばかりに、だらしなく着用していたズボンを整え、どかりとソファに腰を降ろす。私は、何を話せばいいんだろう。

「迷惑だなんて、思ってねぇぞぉ。」

不意に口を開いたスクアーロさんに驚いて、そちらに顔を向ける。スクアーロさんは私の方など見ておらず、やけに真面目な顔してテーブルに広がった冊子に目を通していた。この人は私の心を読みとれるのか。いや、多分私が分かり易すぎるんだ。

「ごめんな、さい…」
「謝るな。次言ったらかっ裂くからなぁ。」

ちょっと怯むキツい一言。けど私は分かってしまった。その言葉の裏に潜む優しさに。謝る程のことはしていないよって、次に何かあっても、謝ることはしないでって言ってくれてるんだ。深読みしすぎかな?けどこの時、もうストッパーなんてなかった私の涙腺は緩みすぎていた。どうしよう、また泣く。そう思った瞬間にベッドを飛び出して、ソファに座っているスクアーロさんの元に走った。何故そうしたのかは分からないし、いちいち考えたくもなかった。もう一度、心の中で謝ります。ごめんなさい。だからさっきみたいに、どうか、どうか、


貴方の胸で泣かせて下さい


泣き止めるのはここしかないと、思いたいんです。



stage13 end



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