朝食の味は覚えていない。そんなことよりももっと重要なことが、思考を占領しているから。初恋の人をまた好きになるなんて、私成長してないのかな?いやいや、殺人犯と分かった上で好きになっちゃうとか、悪い方向に成長した証拠かもしれない。でも昔の私は間違っていなかった。だって間違いなく、スクアーロさんは、

「優しい、人だもん。」
「誰が?」
「うわあっ!!」
「ししっ、変な独り言。」

ベルさんだ。よく声をかけてくれるけど、目が見えないから人格が読み取りづらいんだよね…オーラとか超怖いし、あんまり良いイメージがない。それでも、何だかんだ言って悪い人ではない気もしてる。

「誰だよ、優しい人って。」
「ただの独り言ですよ!」
「うーそ。なまえ、顔赤いぜ。」
「え!」
「あ、引っかかった。やっぱ何か隠してんじゃん。」

相変わらず歯をちらつかせながら笑うベルさん、ぐっと顔を近くに寄せられてドキンと心臓が一回跳ねた。無駄に格好いいんだよな、この暗殺部隊の皆さんは。

「…ま、どーでもいいけど。それよりソレ!いーじゃん。」

話をあっさり切り上げてベルさんが指したのは昨日買ったワンピース。この場所では確実に浮いてるけど気にしたら負け!それに、真っ黒な隊服を着るわけにもいかないしね。

「ありがとう!私もこれ気に入ってるんです。」
「姫って感じ。ほら、俺が王子だから。」
「そう言えば、ベルさんって本当に王子様らしいですね!日本では考えられないです。」
「ししっ、当たり前。ま、なまえの王子はどっかの鮫なんだろーけど。」
「…鮫?」
「分かんないならいいって。けど鮫の姫なんて嫌だろ?」

ベルさんはよく分からない。鮫って海にいるアレだよね…まず生物学的に違う生き物じゃないか。けど嬉しいかも。その“姫”って響き。こちらに来てから、本当に絵本の世界に入ったようなことばかり起こる。

「ベルさん、それ、どういう意味で…」
「なまえさ、簡単なイタリア語勉強したら?」
「え?」
「うわ、もうこんな時間じゃん。俺任務だから、じゃあ。」

あらら、行っちゃった。突然現れ、すぐ消える。そして後に残るのは空虚感だけ…まるで嵐みたいな人だ。イタリア語を勉強しろとか言ってたな。確かに、簡単な言葉くらい話せた方が便利だ。こっちにテキストとかあるかな?ちゃんと勉強して、さっきの話の続きが聞きたい。



stage10 end



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