「スクアーロさん、また空になっちゃった。お酒、もっと飲みたぁい。」
「…酔わせるととんでもねぇな、お前。」

え?何か言った?まぁいいや。凄く気分がいい。最初のワインから始まり、止まらなくなった私は次々と他のアルコールにも手を出した。備え付けの冷蔵庫にこんなに入ってるなんて思わなかったな。日本酒まであった!あ、スクアーロさんに何処まで話したっけ?会社の上司と付き合って、私一人で結婚する気になってて…でも結局喧嘩、喧嘩の原因なんだっけ?

「喧嘩、しちゃって。」
「それはもう聞いたぞぉ。浮気だと疑われたんだろ?」
「そう、そうなんです。私、してないのに…ほっんと、してないのに。なのに…」
「分かってる。」

最近つれない、デートの回数が減った、浮気してるんじゃないかって?馬鹿。上司なら分かるでしょ。担当してた仕事が忙しくなっただけ。仕事疲れで休みの日はほぼ一日睡眠、それでもアナタのために頑張らなきゃって思ってたのに。そんなのって、ないよ。

「スクアーロさん、私捨てられたのかな?浮気したからっていうのは立て前で。」
「さぁな。」
「勿体ないですよね?顔も体も並だけど、料理も家事もそこそこするし、尽くすタイプなの、に。」
「確かに勿体ねぇ。」
「ですよ、ね!ね!」

嬉しい。スクアーロさんが仕方なく相槌を打ってるって分かっていても、私を捨てたこと、勿体ないって!嬉しさのあまりスクアーロさんにぎゅうって抱きついちゃった。いいよね?私酔ってるんだもん、許してくれるよね?

「なまえ、もう休め。」
「まだ飲みたい…駄目、ですか?」
「駄目だぁ。」
「なら、運んでください。立てないんです。」

我ながら大胆なことを言ったと思う。見たはずなのに、この人が人を殺すところを。どうして怖くないんだろう。ああ、酔ってるからかな…お酒の力って凄いや。

「これで満足かぁ?」
「う、わ。力持ちですねぇ。お姫様抱っこなんて初めて!」
「いつでもしてやるぜぇ、このくらい。」

ベッドまで運んでもらって、背中に柔らかい感触。私の全体重と、スクアーロさんの片膝にかかった体重とでベッドが短くギシリと鳴いた。スクアーロさんの首に回した腕を離したくない、離さなきゃいけないのに。

「ゔお゙い、腕を離せ。」
「はい…でも、離れないんです。」
「んなわけねぇだろぉ。」

やだやだと首を振る私は小さな子供みたい。子供…ああ、そうだった。スクアーロさんから見れば、私はただの子供だった。年は32だと言ってたっけ。私は今年でやっと24…だけど、そんなに違わない。外人さんは日本人より大人っぽく見えるだけだもん。

「やっぱりないですよね、魅力なんて。だから捨てられたんだ…」
「ゔお゙ぉい、自虐的になってんぞぉ。」
「だって、だって!」
「いいから、黙って寝ろ。落ち着いた時に顔から火が出るぞぉ。」

優しく腕を解かれ、私の体は完全にシーツに沈んだ。最後に見えたのは、上から掛け布団を腹に乗せるスクアーロさん。目を細めて微笑んでいた気がする。










「なまえちゃんは?」
「!…今寝たところだぁ。」
「スクアーロが励ますなんて、明日槍でも降るんじゃねぇ?それとも責任感じてんの?ししっ。」
「酒飲めば嫌なことは忘れるもんだろぉ。つーかお前ら何なまえの部屋の前で突っ立ってんだぁ?」
「「スクアーロが種を撒かないか心配で。」」
「ほぉう、そんなに卸されてぇか…」


そんな会話、私は知る由もない。


stage8 end



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