「犬を飼いたい。」
「…飼えばいいんじゃねぇか?」
「スクアーロ、あんたどうせイヌ科の哺乳類のことだと思ってるんでしょ?違う。私が飼いたいのはそっちの犬じゃないの!私の手駒、都合のいいように動き回ってくれる下僕が欲しいって意味なのよ。別に私サディストなんかじゃないけど、欲しいの。」

私の言葉に開いた口が塞がらないスクアーロ。暗殺者のくせに情けない顔。男前なことがせめてもの救いってやつだね、DNAをくれた両親に感謝なさい。

「部下がいんだろぉ、上手く使え。」
「分かってないなぁ。雑用係りなんていらない。私が欲しいのは…」

無償の愛。欲しいのはつまりそれ。私の指示通りに醜態晒しながら喘ぎ、懸命に腰振るだけのマゾヒストじゃ意味がない。私が食べたいものを既に用意してくれていたり、眠たい時は布団をかけて抱き枕になってくれたり、嬉しい時に一緒に笑ってくれたり、悲しい時にそっと側にいてくれたり、そんな無償で綺麗な愛が欲しい、本当はね。けど私がそんなこと言ったら可笑しいでしょ?欲にまみれた人生を送ってきたのだから。

「ゔお゙ぉい、言い掛けてやめんなぁ!!」
「うっさい。とにかく犬!犬が欲しいの!!」

分かってなんか、くれないでしょう。こんな複雑で、自分でもよく分からない曖昧な気持ち、スクアーロになんか分かるもんか。お金で体を売ったことだってあるし、一人が寂しくて知らない男と夜を共にしたことだってあった。どれも欲にまみれた愛情ばかりで悲しかったよ。自分が愛さなければ愛してもらえないのと幼い頃母に言い聞かされたけど、愛を引き替えに貰う愛なんか好きにはなれなくて、でも誰かと愛し合いたいと思っている。自分の中で矛盾ばかりが生じて嫌になる。

「なまえは犬なんか探さなくても、いんだろ?世話してくれる奴。」
「そんなの、いない!」
「じゃあ今なまえの髪結んでやってんのは誰だぁ!!」

目の前の鏡を見れば、私の髪が綺麗に結われていく様が見られる。髪に指を通しているのは紛れもなくスクアーロだ。世話っていうか、口煩く説教垂れるお節介。私はそんな説教、全く聞いていなかった。体を売った日も、スクアーロは止めてくれたのに。そんな意味のない愛を求めるなと、私の頬を打ってくれたのに、私は。

「…鮫、だね。私が欲しいのは犬なんだけど。」
「今すぐ卸してやろうか?」
「いらない。」

十以上も年上のスクアーロ、ただのおっさんじゃんかって思ってた。煩くて無神経で馬鹿で。それでも思い返せば、いつも側にいてくれたのはスクアーロなのに、ね。一人が寂しい時、スクアーロの部屋に行けば慰めてくれただろうか。私みたいなガキを女として抱いてくれただろうか。もしそうなら、処女をいらない金で売った私は本当の馬鹿だ。スクアーロ以上の馬鹿だ。

「スクアーロは、私を抱ける?」
「あ゙あ゙?無理無理。テメェみたいなガキ相手じゃ勃つもんも勃たねぇだろぉ。それに、」



俺はお前に何も求めねぇ
なまえは愛ってもんを俺から欲しいだけ受け取ればいいんだぁ



「…わ、たし、出来がいいなら鮫、でも飼ってやらなくない、よ。」
「泣くなよ、意地っ張りが。」



090711

某学園アニメを見て。


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