最初から神様が相手を決めてくれていたらいいのに。そしたら悩むことも傷付くこともなく、それを受け入れるだけでいい。

「これボスから。」
「また俺かぁ?」

まったく人遣いが荒いだの何だのと文句を言いながら、スクアーロは私から手渡されたメモを受け取った。少しだけ触れた指先が、ずっと感覚を覚えている。触れてしまうと切なくなるばかりなのに。

「手伝おうか?」
「同情なんかいらねぇぞぉ。」
「捻くれ者なんだからー。」

スクアーロが小さく吹き出して、私もつられて笑った。幸せ、なんだと思う。この優秀な暗殺者はこんな日常を幸せだとは思わないかもしれない。それがまた更に切なくて。

「なまえ?」

スクアーロは何の躊躇いもなく、急に私の顎を指で持ち上げる。突然のことで私の体は硬直しきっていて、声すら出ずただ頬が赤く染まるだけだった。

「目が笑ってねぇぞぉ。」

何かボスに言われたかとか、具合が悪いのかとか、いろいろ心配してくれてるみたいだけど違うよスクアーロ。違うんだよ…

「ここ、泣くとこじゃねぇだろぉが。」

ほろほろと涙を流しだした私を見て、スクアーロは私の顎から手を離した。焦るわけでもなく、驚くほど冷静に、その手は私の頭の上に。あやされているようでなんだが情けなかった。

「ごめん。辛いことがあったわけじゃ、ない。幸せだって…」

思って、しまったの。

「ごめん…」

俯いた瞬間、ぽたぽたと床を濡らす私。

「謝るとこでもねぇだろぉ。」

濁った声でそう言って、スクアーロは自分の額を私の旋毛にコツンと当てた。白銀の髪が頬に触れる。さっきまで頭の上にあった手はそっと肩に添えられていて、体の中で溜め込まれていた想いがフツフツと湧き上がるのを感じた。

「好きって言ったら、迷惑ですか?




もし最初から神様が相手を決めてくれたとしたら、私の相手は誰だったんだろう。スクアーロの相手は誰だったんだろう。私は、スクアーロと同じ時間を共有しながら、自分以外の誰かと結ばれるスクアーロを黙って見ていられたのだろうか。神様を呪ってしまったりしそうだ。

「迷惑も何も。」
「同情なんかいらないんだから…」
「捻くれ者。」

俺だって幸せだから笑えるんだと、彼は教えてくれた。



131220
いえい久々!


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