「悟ったぁあああああ!」
「なまえうるせー。」

ベルが態とらしく耳を両手で塞いだ。そのくせすぐに手を離し、何を悟ったわけ?と興味を示してくれる。ああ捻くれてても根はいい子だよなぁベルって。それと比べてスクアーロときたら。

「ふあぁーあっと。」

欠伸一つで済ませやがって!けど語尾がちょっと可愛かったから許す。熱いコーヒーをずずーって音立てながら啜ってる姿も可愛いからもう何でもいい。

「愛とは餃子だよ。」
「え?王子よく聞こえなかったんだけど。」
「愛とは餃「わりぃ聞こえてたわ。」

あ、ベルってば今私をバカにしたな。ふん。バカにしたけりゃすればいいさ!ずっと考えてた。愛ってホントは何なの?ってね。愛の形は様々だから、誰かが一言でそれを説明するのは不可能だけど、つまり餃子なんだよ。

「具が我が儘で、皮が優しいの。」
「逆じゃね?具は皮に閉じ込められてんだし。」
「ベルは鬼畜ちゃんだね。」
「否定はしねーけど、Sって言えよ。俺が好きな女監禁してるみてぇに聞こえんだろ。」

コーヒーが多少冷めたのか、スクアーロは静かに喉へ流し込んでいく。ごめんベルの話よく聞いてなかった。まぁいいか。気づいてないみたいだし。

「閉じ込められてるんじゃないよ。あれは包まれてるんだ。皮って頑張り屋だよね。」
「餃子の性格なんて知るかよ。」
「けど具がいないと侘しいんだ。」

餃子の皮って他の料理にも使えるし、相性もいいんだけど、やっぱり餃子にするのが一番美味しいんだよね。具あってこその皮じゃん。

「そう、スクアーロあってこその私なの!スクアーロがいないと侘しい寂しい悲しいの嫌なこと続き。」
「先輩具だってさー。」

スクアーロはベルの言葉に目立った反応は見せず、代わりに口を小さく開く。また欠伸か?と思いきや、何度かパクパクしただけだった。欠伸出そうだったけどやっぱ出なかった的なアレ。ぁああああ可愛すぎだろぉおおぉおお!!

「それにさ、男を包むのは女の役目だよね。卑猥な意味でも、男のアレを包むのは女のソレなわけで。」
「もう黙れよ。」

ついにベルが首をかくんと落とした。やはりベルにはまだこの哲学は理解出来なかったんだろう。何度目かの視線をスクアーロに向けると、丁度カップに口を付ける瞬間だった。カップが死ぬほど羨ましい!しかし口付けた瞬間、弾くようにカップを遠退ける。どうやら中身が空になっていたにも関わらず啜ってしまったようだ。もぉおおおこの三十路はぁああああ!!

「そんなスクアーロを私で包んであげたいのぉおお!!」
「なまえ。」

ほらみろ。やっぱ餃子は愛だよ。ベルが何言っても無視ってたのに、私が話せば応えてくれたのがその証拠。

「もう一杯飲みてぇ。」

空になったカップを渡され、素直に受け取った。分かってる、分かってるよスクアーロの好みは。

「入れてくる!」
「頼んだぞぉ。」

具を優しく包むのが皮の役目。パシリ?違う断じて違う。妻が旦那に飯装うのがパシリというのか。彼女が彼氏にコーヒー入れるのがパシリというのか。頼られてるっていいなぁと幸せを噛みしめ、私はキッチンに急いだ。



「彼女があんなバカな変態でいいのかよ。」
「可愛いとこあんだぜぇ。自分が具じゃなくて皮だと思ってるところとかなぁ。」
「じゃあセックスは何か突っ込まれてんの?」
「そこは俺が具でなまえが皮だろぉ。」



餃子=いろんな愛の形+α



「コーヒー!」
「早かったなぁ。(この笑顔とかも、なぁ。)」


スクアーロがお礼にって言ってほっぺにチューしてくれた!



100417

餃子旨いよね。


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