「ボロ負けかよ。だっせーな。」

重い瞼をゆっくり持ち上げた。いつの間にか降り出した雨が、地面を緩めている。霞む視界に映った黒いブーツ。この声は、スクアーロ?

「負け、ちゃった。」
「ああ。」
「私の肢体、手は?足は?…全部、ちゃんとある?」
「ああ。全部あるぜぇ…ただ出血が半端ねぇ。骨も何本かやられてる。」
「あるなら、いい。助けに来てくれたの?」
「嫌な予感がしてな。」

スクアーロに担ぎ上げられた時、ズキンと痛みが増した。体中が痛くて痛くて、どこが痛いのかもよく分かんない。初めて味わった敗北…一人で大丈夫だなんて調子に乗って言うから、こんなことになったんだ。

「ごめっ…私、まだ、こんなに弱、いのに。」
「喋るな。標的は俺が始末しておいた。なまえはこのまま集中治療室行きだぁ。」
「情け…ない、ね。」
「ああ、全く。」

ずぶ濡れなのをいいことに、私はボロボロと涙を流した。痛い、悔しい、情けない…絶対に勝てると思った。私が負けるわけないって。こんなハズじゃ、なかった。

「っす、くあーろぉ…痛いよぉ、凄く、痛いの…」
「分かってる。」
「スクアーロが来てくれなきゃ…死んで、た…」
「だろぉなぁ。」
「あり、がと。」

車の後部座席に寝かされ、落ちるなよと忠告を受けた。自分で体を動かせないから、そんな忠告無意味だけどね。かけてくれたスクアーロの隊服も無意味だよ。それも濡れてる…濡れてるのに。凄く暖かいの、どうして?

「もうちょっと我慢しろよぉ。」
「無理、痛いもん…我慢出来ない。」
「いつも通り、そんだけ言えりゃあ十分だぁ。」

その時私は、運転席に座るスクアーロを後ろからぼーっと見ていた。濡れた髪が、綺麗。

「それ一週間で治せ。」
「…骨折してんだよ?肩とかマジで銃弾貫通したんだよ?」
「一週間。」

しれっと言いやがってこのカス鮫!後ろから殴り飛ばし…あ、動かないんだった。そっか、治さないと嫌味に反撃も出来ないのか。

「ま、溜まったら他の女と寝ていいって言うなら話は別だぜぇ。」
「いいわけないでしょうがよ。」
「耐えられて一週間だな。」

この状況で下ネタ引っ張ってくる奴の気が知れない。でも痛みから気が逸れて楽かも。いたたっ、思い出したらまた傷が痛み出した。

「五日で治してやる。」
「精々頑張れよ。」



とは言ったものの、本当に五日で治るわけがない。しかし任務でもない限りずっと私に付きっきりなスクアーロを見て、浮気なんてのをする気は更々ないんだなぁと安心する今日この頃。

「溜まった?」
「うるせぇ。今は禁欲中だぁ。」
「精々頑張ってね。」
「…」




100314

ちょっとシリアスが書きたくなって


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