立ち込める血液の臭いが鼻を突く。辺りは真っ暗…ああ嫌んなっちゃう。こんな寒い日に、こんな寒い所でお仕事なんて。けどもう終わり。早く帰りたいな…私はガラガラと崩れた瓦礫の上にうずくまり、ハァと白い息を吐いた。

「わ…」

道理で息がこんなにも白いわけだ。項に小さな氷が当たり、溶けた。空を見ると、息よりも白い塊がふわふわと舞っている。それは瞬く間に量を増し、地にうっすらと層を成した。

「雪かぁ。今年は初めて見たな…」

今年度の初雪をこんな所で見てしまうとは、私もつくづくツいていない女だ。寒いし早く帰ろう。車、何処に停めたっけ?

「降ってきやがったなぁ。」

空しか見ていなかった私の目が、鬱陶しいロン毛を捉えた。暖かそうなもふもふフードをすっぽりと被ったスクアーロ。うわずっりぃー!

「ちょっと、私の隊服にフード付いてないんだけど。」
「お前隊服発注する時、A-1で申告しただろぉ。フード付きはA-2なんだよカスが。」
「聞いてないよ!」
「まぁ嘘だしな。」

取り敢えずスクアーロの脛にグーで一発入れておいた。本当はどうしたらフード付きの隊服になるのか、アジトに帰ってゆっくりスクアーロから聞き出さねば。

「寒いから帰ろうよ。車どっちだっけ?」
「っ、ブーツの金具、…今日一番の負傷だぜぇ。」
「金具狙ったに決まってんじゃん。暫く青あざ作っとけ。ほら、車どっちよ。」

スクアーロは立ったまま右足を抱え、ほんのちょっとだけど目を潤ませていた。私は、このおっさん可愛いなオイと心の中で呟き、勘で足を進める。

「ゔお゙ぉい、反対だぁ。」
「…早く言って。」

恥ずかしいじゃん!くるりと向きを変え、スクアーロを放置したまま車へと向かう。スクアーロはすぐ復活し、その大股で私に追いついた。雪は先程より幾分落ち着いてきている。

「しかしラッキーだったなぁ。」
「何が?」
「俺と初雪が見られて。」

本気でもう一発金具ごと脛に入れてやろうかと思った。脛骨折るぞってくらいの勢いで。スクアーロもそれを予期していたのか、私と微妙な間を取る。

「…なまえ?」
「こ、こっち見ないでよ!」

何故か赤く染まる頬。図星だった?いや、違う。こんな死体に囲まれた場所でラッキーもクソもあるか!そりゃ一人寂しく眺めるよりかは良かったけど、そんな…

「なまえの素直な返事次第で、真っ直ぐアジトに戻らなくてもいいんだぜぇ?」
「え?」
「ホテルにでもしけ込「真っ直ぐ帰ろうか。スクアーロ作戦隊長サマ。」






もう少し気持ちの整理をさせて。そこから考えるから、ね。





100214

世間様はバレンなんとかって日らしい
知らんがな^ ^



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