落ち着いて、よく考えろ私。たかが、たかが十日じゃないか。そんなの誰にだってあるし、それに伴って体が怠くて熱っぽい気がするのも、不思議じゃない。ほら今風邪流行ってるし!

「なまえちゃん…やっぱりそれは妊娠してるんじゃ「滅多なこと言うもんじゃないよルッスーリア。」

ないない、絶対ない。だって、これでもすっごく気をつけてるんだよ。お互い仕事に差し支えるから、まだ作らないって決めてるし。ルッスーリアは話が飛躍し過ぎてる。十日くらい生理が遅れたって何さ!これは不規則な生活が原因だ。そうに違いない。

「違う、違うもん。」
「なら俺にこんなもん買わせるんじゃねぇ!」

バコンと軽い音を立て、私の頭に長方形の箱が落とされた。そんなことをするのは勿論スクアーロで、箱の中身は簡易検査器具。任務の帰りでいいから買ってきて!と昨日から頼んでいた物だ。違うと信じてはいるものの、多少不安になるのは女として当然だよね。

「お、お帰りスクアーロ。お疲れ、そんでもってありがとう!自分で買いに行くのは何か恥ずかしくて…」
「ガキじゃあるまいし。」

スクアーロはため息混じりにそう言ってソファに腰を下ろした。コートを脱ぎ、ルッスーリアに差し出されたコーヒーを啜るその姿は、悔しくも絵になる。

「…今日はコーヒーより紅茶の気分だぁ。悪いなルッスーリア。」
「あら。スクアーロが紅茶なんて珍しいわね。」
「濃いめの…レモン。」
「はいはい。」

お母さ、んじゃなくてルッスーリアが、スクアーロの飲み掛けのカップを持って部屋を出た。私は箱の中にある説明書を一読し、本体を手に取る。さて、そろそろ行きますか。

「なまえ似の女がいい。」

立ち上がった時、急に言われたその台詞。え、ちょっと何勝手におめでた確定してんの?性別指定されたって無理だし。いやそれなら私だって…

「駄目。スクアーロ似の男の子。」
「ゔお゙ぉい、何が嬉しくて他の男になまえの乳吸わせなきゃいけねぇんだぁ!」
「大人気ないにも程があるよスクアーロ。こっちこそ、何が嬉しくて他の女抱きしめるスクアーロを見なきゃいけないのよ。」

うわあ、私も大人気ない。他の男?女?どっちも子供じゃないか。分かってはいるんだけど、もし娘だった場合、スクアーロが本気で溺愛しそうだから駄目。ま、まぁ私にも言えることだけどね。スクアーロ似の男の子…

「男だと、なまえが俺に構わなくなるだろぉ?」

足を組み直したスクアーロが、ふんっと拗ねたように鼻を鳴らした。そういうとこ、ホント子供なんだから。けど可愛い。こんなのが毎日見れるようになるなら、益々男の子を産みたいな、とか思っちゃうよ。

「あのさ、検査すんの今からなんだけど。」

今からだけど、不思議。どうかこの体に命が宿っていますようにと願ってしまう。まだ作らないって決めてるのに。早くしてこいとスクアーロに急かされて、私は部屋を出た。どうしようもなくニヤケてしまう自分が気持ち悪い。




さぁ、結果は?




「お待たせスクアーロ。お手洗いの前で、随分嬉しそうな顔したなまえちゃんを見たわよ。きっと陰性だったのね。」
「…逆じゃねぇかぁ?」



091228

ルッスに嫉妬心を知られたくなかった鮫
本当は紅茶よりコーヒー派


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