「たいちょ…あた、し、もっ…やだぁ。」
「ゔお゙ぉい!最初に言っただろぉ?今夜は寝られねぇと思えってなぁ。」






机に山積みにされた書類。それを一枚一枚チェックしはじめて早五時間…全く減らない書類に嫌気がさし、私は机に突っ伏した。こうした情報処理は私の仕事だ。だけど、だけどさぁ!

「こんなにまとめて持ってこないで下さい!!何ヶ月分溜め込んでたんですか!?」
「うるせぇ!悪いと思ってるから手伝ってやってんだろぉが!!」

通常、こんなに溜まることはない。しかしそれは隊長が任務終了毎に書類を持って来てくれればの話だ。深夜まで情報整理だなんて、残業にも程がある!…でも、悪いことばかりじゃなかったり。こうして密かに想いを寄せているスクアーロ隊長と、隊長の部屋で二人きりになれて、しかも任務外の隊長のラフな部屋着まで見れちゃったわけだしね。

「だが、俺も疲れた…コーヒーでも飲むかぁ?」
「あ、じゃあ私が…」
「座っていろ。ちょっと休憩だぁ。」

そう言って隊長は部屋を出た。想い人の部屋に一人取り残された私は、ドキドキする胸を押さえて部屋を見渡す。隊長室とは別の、隊長の自室…部下で入ったのって、絶対私が初めてだよね。すっごく眠いけど、残業万歳!

「…あれ?」

ソファに、何かある。近寄って見ればそれは大きめのタオルケット。疲れてソファで寝ることもよくあるんだろうか…戦闘要員の辛さは、私みたいな事務要員には分からない。そう思ってみれば、つい書類を溜め込んでしまう理由も分かる気がする。それでも、悪いと言って手伝ってくれるなんて。

「隊長…」

ぎゅうっとそのタオルケットを抱きしめてみた。隊長の匂いがする…

「ゔお゙ぉい、何してんだぁ?」
「きゃあああ!!」
「でけぇ声出すんじゃねぇ!」

いつの間にか部屋に戻っていた隊長。私はタオルケットをばさりと落とし、恥ずかしさのあまり頓狂な声を上げてしまった。いや隊長の声の方がデカいです!なんて言えるはずもなく、私は大人しく、すみません…と、頭を下げる。

「そんなに眠いなら、暫くそこで寝ていろ。一時間で叩き起こしてやる。」
「い、いえ!た、隊長のお部屋で、そんな…」

私がそこまで言うと、隊長は小首を傾げた後、小悪魔のような笑みを浮かべた。

「なぁに意識してんだぁ?変なこと考えてんじゃねぇぞぉ。」
「!!考えてません!」

顔面がかあああって赤くなるのが分かる。早く冷めろ!早く早く!季節柄冷えていた指先を頬に当て、心の中で何度もそう叫んだ。しかしそんな指先を締め付けるように、隊長は痛いくらいの力で私の手を握る。冷たいものが離れた頬は熱を増すばかり…こんな顔見られたくないのに。俯いた私の顎を持ち上げるのは、硬い、手。

「なまえになら、してやらなくもないぜぇ。」
「なっ…何、を?」
「変なこと、とかな。」

耳にかかった隊長の息が、私を惑わせた。りんご状態の頬に受けたキスは、コーヒーよりも効果的に眠気を吹き飛ばす。ぐっと体重をかけて膝を折らせようとする隊長に、私は最後の理性を示した。

「ざ、残業のとちゅ…です…」
「今日の晩も手伝ってやる。但し、この部屋でなぁ。」






少し寝坊した朝。私達を待っていたのは


冷めたコーヒーと
不機嫌なボス



「二人して仕事がおせぇ。」
「…」
「すみませんっすみませんっ!」


091128

コーヒーよりココアが好き


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