「何だよ、急に。」
「よく聞いて。凄く大事なことなの。」
あまり乗り気でないスクアーロの腕をぐいぐい引いてきて部屋に押し込んだ。任務から帰ったばかりで疲れているのは分かるけど、今日こそはキッチリと話をつけなければ。
「スクアーロ、私は貴方が本当に好き。凄く強くて、なのに優しくて、最高だと思う。」
「ゔお゙…ぉ、う…な、何だよ急に…」
「でもだから駄目なんじゃないかなって。」
「…は?」
「定着しすぎよ、このヘタレキャラが!!」
「んだとぉ!!?」
そう、キッチリ言ってあげなきゃ。愛する人の為だもん。ヴァリアーでボスに次いで恐れられていても、いっくら作戦隊長でもだ。
「ヘタレ隊長じゃ部下に示しがつかないでしょ?」
「ヘタレじゃねぇ!なまえが一番よく知ってるだろぉ!?」
「私が知ってても大事なのは周りのイメージよ、ベルにヘタレ呼ばわりされてるようじゃ駄目!!」
今日だって、ヒラ隊員じゃ何人で行ったって成し得ない任務を一人で華麗に遂行してきたって言うのに、
「スクアーロ作戦隊長、時間かかりすぎじゃね?」
というベルの一言であーだこーだ喧嘩を始め、言いくるめられて先に口を噤んだ。ベルに口で勝てるわけないのに。それがいけないとか、大人気ないとか言ってるんじゃないけどね、もっとこう…具体的には何も言えないけど、兎に角!!
「脱ヘタレしろ!」
「あ゙あ゙!?ヘタレじゃねーつってんだろぉカスが!!!」
「カスって言うなカス鮫!!」
「だからカスはテメ…いや、先に言い始めた俺が、悪い。はぁ、なまえと喧嘩しても解決しねぇだろぉ?そんなに言うなら、なんか考えろよ。」
あれコレじゃね?スクアーロって短気なくせに優しいから、勝手に怒ってすぐ優しくなっちゃうツンデレっぷりがヘタレオーラと化してるんじゃ…だとしたらベッドの中では憎らしいくらいのドSであるスクアーロも、それ以外ではずっとヘタレ?そんな、じゃあ私はずっとヘタレにベタ惚れな女って周りに思われ続けるの?
「そ、そんなぁ。」
「ゔぉ゙い、どうしたぁ?」
「ベッドの中くらいのドSっぷりを外で発揮しろよバカ…」
「ベッドの中の俺を知っているのはなまえだけでいいだろぉ?」
「なっ、んー」
不覚。何だよ鮫のくせに。カスのくせに。ベッドの中のスクアーロを知ってるのは私だけじゃない。過去に寝た女は何人いるの?私だけ特別扱いしないで、浮かれちゃうでしょ。それに急にキスなんてらしくない。わ、舌入ってきた。や、ちょ、駄目っ、頭ん中がとろんってしちゃって目を瞑っちゃいそう。時折聞こえるちゅくって音が厭らしくて恥ずかしい。
「っう、あ。」
「そんな顔、すんじゃねぇ。」
口元からだらしなく垂れた唾液を舐めとられ、軽々と抱き上げられた。やだな、昨日体重1kg増えてたのに。そんな私の考えも知らず、スクアーロはベッドに私を埋める。いつも寝ているベッドが、二人分の重みにギチッと高い音を立てた。
「え、するの?」
「脱ヘタレってやつだぁ。」
「せ、セックスの時は最初からヘタレじゃないよ!私が言いたいのは日常での事で…」
「聞こえねー」
「もーバカァー!」
私の前にはいつだって
格好いいスクアーロしかいないよ
あ、周囲へのイメージ回復失敗。
090803
ヘタレじゃないもん。
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