好きな色は黒。服も装飾品も、選べるものは全て黒を選んだ。就職先だって、ヴァリアーの隊服が気に入って入ったくらい。それから程なくして私は幹部まで上り詰めた。何事も顧みず上ばかり見てきたのだから、それは当然とも言える。

「なまえって黒好きだよなぁ。」
「うん。今更?」
「どうしてココは黒にしねぇのかと思って。」

情交後の薄暗い部屋、ベッドの上でスクアーロは私が着けている下着を指さした。勿論これも黒ばかり、だった。幹部に昇格して、スクアーロとの距離が縮まって、恋に落ちて。恋なんて知らなかったけど、これが恋だと思った。たぶんその頃だ。気晴らしに街へ出た時、下着のサイズが合わなくなったことを思い出して立ち寄った店で、買った。黒ではない色のを。その色を見ていると、何故かスクアーロを思い出してしまってついつい手が伸びたのだ。

「今思えばバカみたい。」
「あ゙?」
「気にしないで。」

スクアーロだって全身真っ黒で、シルバーの髪がキラキラ光っているだけなのに、どうしてこの色なんだろう。当初はそう思っていたけど、今だと自分の直感力に驚ける。

「下着は青ばっかりだな、なまえ。」
「水色だもん。雨だぞーって感じ。」
「雨は水だから無色だろぉ。」
「じゃあ水色が水の色って書くのはどうして?」

痛い。屁理屈を言うなって頬をぎゅっと抓られてしまった。そりゃスクアーロの属性が雨だってことくらい知っていたし、だから何だってこともなかった。属性が雨のマフィアなんていっぱいいるんだもん。けど知らなかったんだよ。あの有名な、今はなきボンゴレリングの雨の守護者候補だったなんて。雨は山本武、そう認識していた。なのに、守護者争いには俺も参加した、なんて言うものだから。

「これはね、スクアーロの色。雨の色なの。」
「雨…?ああ、あの話か。もう十年も前の話だぁ。」
「それでも、いいの。」

偶然か必然かは分からないけど、この色を手に取った時から私にジワジワと染み込んできていた。何色にも染まらないはずの黒が、こんな鮮やかな水色になるほど深く深く染まって、これはもう、きっと落ちない。


「十年前は山本君にズタボロにされたらしいね。格好悪っ。」
「いや、山本にと言うか…その…」
「?」
「(鮫に食われたなんて、言えねぇ。)」



090726

知らない方がいい過去。


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