短編たち | ナノ
23. (引き続き響)
そんなときクラスが同じになった小柄な男に告白された。
それが那月だ。
小さくて可愛い那月は時雨とは正反対で、よく笑い、よく泣く、表情のころころ変わるやつだった。
(もっと見たい)
時雨は俺が男と付き合い始めたと知ったらどう思うだろう。
湧き上がる最低な思いは、最低でありながらも幼稚な恋心だった。
案の定、期待通りの傷ついた顔を見せてくれた時雨にまたまんぞくして、わざと那月を家に連れ込んで那月を抱いた。
時雨の笑顔が減ってることに気づくことも出来ず、目の前の快楽に溺れた。
那月を愛せば愛すほど時雨の傷ついた顔がみれる。
でも結局時雨に触れたい俺は「那月を妬かせるため」なんて名目で時雨を大切にした。
時雨が部屋を出て行くと言いはじめたとき、やっと気付いたのだ。
時雨の気持ちが俺から離れてしまったことに。
好きな奴ができたのか、問うた時の動揺に無性にイラつき、耐えられず、結局無理やり時雨を抱いて、それで。
「うそだろ。」
時雨がいた空間をみつめて、唇に触れながらつぶやいた。
声は思ったより掠れていて、震えていた。
すきだった??
時雨が??俺を??
だとしたら俺は、俺は。
時雨になんて言った?
時雨を抱きながら、那月を呼んだり、ほかにも、ほかにも。
「っ、」
自分の犯した失態にやっと気付き、今となっては時雨は遠い。
なあ時雨、俺は今になって、なお
お前の笑顔が俺だけのものになればいいなんて思うんだ。
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