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後ろでいろんな声が聞こえたけど、全部無視して歩き始めた。
馬鹿みたいに好きだった俺の馬鹿みたいな恋心は完全に消えるまでに時間がかかるだろうけど
最後にすごい間抜けな響の顔が見れたからいっか。
「っく…」
溢れる嗚咽と涙は止まらなくなっていて、近くのトイレに駆け込んで、声を抑えて泣いた。
好きだった。
根暗とか言われてた俺を引っ張り出して、笑うことを教えてくれた。
居場所をくれた。
撫でられる嬉しさを教えてくれた。
切ないくらいの好きを教えてくれた。
「きょ、う…っ」
だからいいと思う。
好きなお前が幸せなら、全然いいかなと思う。
「う、ぁっ、響、…っ」
自分でも笑えてくる純愛ぶり。
すごいあほらしいのに、笑っちゃいたいのに、溢れる涙と嗚咽が笑うことを許してくれない。
今だけだ、
今だけだから。
今だけ、お前を想って泣いてもいいだろうか。
全部すっぱりふっきるから、
「響…っ、」
昨日の俺たちの行為に、愛があったなんて嘘を、自分についてもいいだろうか。
ねえ響、
俺が泣いたんだから、お前はずっと太陽みたいな那月くんの横で笑っていてくれるでしょう?
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