短編たち | ナノ
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「…痛い」
痛いから、まぁ多分現実なんだろう。
ゆっくり起こした体はベタベタしてなくて、先走りとか精液とか、きっと響が片付けてくれたんだろう。
いつも那月くんの体拭いたりしてるしそんなの簡単な作業なのかもしれない。
ただ鼻に付く特有の臭いと、力んだらどろりと穴から出たものについてはため息をつかざるをえない。
時計は5時をさしていた。
つめたくひやりとした床が体に響く。
情け程度に体にかけられているのは脱がされたジャージだった。
「…最悪。」
この様子だと響は帰ったんだろう。
少し差し込む日の光に頭が痛くなった。
頭は痛いし、腰は痛いし、もうめちゃくちゃだ。シャワー浴びよう。
浴びて、もう一回寝よう。
学校は休めないなあ。
昨日今日休んだら課題も溜まっちゃうし、
そんなことをせわしなく考えながらふと窓ガラスをみると不自然に笑った自分と目が合った。
「おはよう」
冷たい空気に意味のない挨拶がじわりと響く。
なお、出てこない涙に自分の気持ちがどこかに行っちゃったんじゃないかとぼんやりおもった。
終わっちゃった
もう潮時だ
よろよろとシャワーを浴びながら首元についている赤い印を指で引っ掻いた。
こんな、餞別みたいなものを残す響を本気で憎いとおもったのに、
そのくせ少し嬉しがる自分を本気で嫌いになった。
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