side時雨
「…放課後教室か」
それが妥当だろうけど
スマホの電源を切りながら背もたれによっかかって息を吐いた。
「おーおー、ずいぶんご無沙汰だったなぁ」
「んー?、おぅ風邪ひいてた」
「お前見るからに体ひよってるもんな」
「まぁ反論はできないけど」
久しぶりの他人との会話に笑みがこぼれる。
ずいぶん吹っ切れた。
考え直せば全然無理なんだけど
ツキツキと痛むものは痛むけれど
「……なに、どうかした?」
安達が神妙な顔でこちらを見てるのに気づき首をかしげる。
「いや、お前なんかあっただろ」
「なんもないけど」
「ふうん。まぁいいか」
まぁいいか、と笑った安達がぽんぽんと俺の頭を撫でた。
またまた久しぶりな他人の体温が妙にくすぐったくて目をぎゅっと閉じた。
『時雨、』
忘れたくてもわすれられない。
すこし冷たくて、大きくて優しい手。
くしゃくしゃとかき回すような乱暴な手つきなのに
それが好きだった。
(結局未練ばっかりだ)
大丈夫、もう少しすれば忘れられるはずだから。
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