次郎部屋 | ナノ



side平岡巴



「邦仁、欲しかったから持って帰ってきたなんて小学生みたいな言い訳通用がするなんて思ったん?俺も舐められたもんやなぁ」


「てか逆にそれ以外に何かあった?」


西園寺先輩とクソ委員長の伊賀の平和でないやりとりをよそに俺は席を立った。



「お前馬鹿かよ」


伊賀の話によれば要がどこかに連れて行こうとしてたらしい。
方向的に保健室か。


「いつもいってんだろ。そろそろ食われんぞ馬鹿」


安らかな寝顔はたしかにきれいで可愛いが、今の俺にはアホ面にしか見えない。


「ずっと寝てんの?ああ昨日遅くまで電話してたもんな」


寝たのは三時とか四時過ぎだっけ。額に触れればいつもより体温が低く感じた。


「それにしてもそろそろ寝すぎ。起きろ」


うんともすんとも言わない次郎。時々むにゃむにゃと口を動かし、赤ん坊のように身を捩る。


「食われたらどうすんだよこのばかたれ」


ぎゅ、と形のいい鼻をつまんで頬をぺちぺちとたたけばやっとうっすら目を開ける次郎。

この様子じゃ誰も起こそうとしなかったぽいな。

ったくほんと甘やかされてんなこいつ。


「んー……あ、ともえじゃーん」


「じゃーん、じゃないから。何時間寝てんの馬鹿」


「えー?いまなんじー」


あ、呂律まわってないの可愛い。


「…昼休み。どうせ寝るならもう帰れ。」


「えーひるやすみ?あは、まじかー」


あはじゃねえよほんと。いつの間に言い争いがやんだのか、伊賀が見たこともないような甘い顔をして次郎に見入っていた。


「平岡、桐生くんおると邦仁仕事せえへんから送ってきてくれへん?」


そんは甘い顔を西園寺先輩が気色悪いものを見るかのように見て言った。


なにそれ、と伊賀は不満をこぼしながらも反対はしていないらしい。


「自分で歩けよそろそろ」

「え、歩くよなにいってんの巴」


よく言うよ。ずっとだれかしらに乗ってたくせに。目を覚ました次郎はすこし憎たらしかった。