次郎部屋 | ナノ





side要千穂



ふんふんふん、と鼻歌を歌いながら廊下を歩く。腕の中にはすやすや寝息を立てる次郎。


「んふ〜、ちゅーしちゃいたいなぁ」


というか食べちゃいたいなぁ。


こうなった経緯はほんの10分前。


「要、次郎寝てんだから黙れ」


ごきげんに教室に入った俺を制したのは山内の冷たい声だった。

ん?

寝てる?


「えっほんとに〜!?」


寝てる次郎の可愛さといったら。
いつもはくっつけば邪魔そうにされるのに寝てる時はなぜかすり寄ってくる。

歩みを進めれば次郎が自分の席で突っ伏すようにして寝ていた。顔が山内のほうを向いていたのも、そんな次郎の髪の毛を山内が撫でていたのも気に食わなかったけどそんなのまぁいい。


ふざけるな!と怒る山内をよそにひょいと抱き上げて誘拐成功。
追いかけようとしてきた山内はタイミングよく後輩に捕まって諦めていた。


「次郎どこいこっかぁ」

俺の部屋?それとも保険室?

いかがわしいことしか考えていなかった俺はとりあえずぎゅうと次郎を抱きしめる。


ちほ、じゃま


も遮る声もなくて頬擦りをすれば「んー」と声を上げながらすり寄ってきた。


うわぁもうほんとかわいい


「なんでそんなにおねむなの〜?」


「んー」


「次郎俺のこと好き〜?」


「んー」


「んじゃちゅーしよっかぁ?」


「んー」


ちゅ、とほっぺたにキスをして、もう一度ぎゅうと抱きしめる。


自分がされたことに気づかない次郎は「あったかい」といいながらやっぱりすり寄ってきた。


「あーやばい。ほんと止まらないわー」


思わず理性がぷっつんしそうになるのを必死を押さえ込んで、今度は赤い唇にキスをしようとした。


「……停学がいい?退学がいい?ねぇ会計の要くん。」