次郎部屋 | ナノ




side山内


ぎゃあぎゃあと廊下が騒がしくて部誌から顔を上げた。

もう本鈴がなるというのになんでこんなにうるさいんだか。


そういえば、と隣の席に目を移せば空席。次郎が来ていない。


「原田くんがきたよ!!」


ざわざわに耳をすませばそんな声が聞こえた。どうやらそれで騒いでるらしい。

来ることが珍しすぎるゆえに来るたんびに騒がれているが


「…今日騒ぎすぎじゃね?」


いつにも増してうるさい気がする。


そんなことより次郎はなにやってんだか。野たれ死んでなきゃいいけど。


「わぁわぁうっせぇんだよ邪魔だ」



相変わらず横暴な態度。お前がいるから騒いでんだろうが、と呆れて原田に目を向ける。

「は?」

そして思わずあほみたいな声を上げてしまった。



いつも通り人を殺せそうな凶悪な面持ち。どうみても人殺してきましたみたいな顔のくせに


「んー」

「てめしがみつくな!このやろう!」


子守でもするように次郎をおんぶする姿は自分の目が狂ったのかと思った。


「は?なにやってんの?」

「見て分かれよ。押し付けられたんだ和樹に」


あぁ、ご愁傷様。

ごろごろと機嫌よさげに原田にひっつく次郎。原田は支えることを放棄したらしく原田の体にコアラのように次郎がしがみついていた。


あ、なんかすげーいらいらする。


「次郎、起きろ。原田が嫌がってんだろ」


お前が嫌なんだろ、と原田が小さく吐き捨てたが全力でスルー。


「次郎、ほら」


あやすように囁けば次郎はやっと離れた。というか一度ちゃんと自立した。


「……あーもーほんとむり」


薄く目をあけてそう呟いた次郎は不満げに口を尖らせ、どうにか自分の机まで寄ってまた突っ伏すように寝に入った。

どうやら寒いのが気にくわないらしい。


原田はため息をついてやれやれとでもいうように席にもどった。

なんでお前が耳を赤くしてるんだとあとで問い詰めなきゃならない。