次郎部屋 | ナノ





side原田ひより


「ったくなんで俺が」


悪態をつきながら運んでしまうあたり俺は和樹に甘い。


よいしょと背中に担ぎ上げると当たり前かのように手を首に回され、桐生の吐息が首にかかった。


「……あとでぶっつぶす」


なぜ耳が赤いかなんてそんな野暮なこと聞かれたら潰す。


「おいてめぇ起きて自分で起きろよ」


学校までの距離は長い。だからさすがの俺でも疲れてくるのだ。
ゆさゆさと揺すって試みるがアウト。むしろさらにぎゅうぎゅうとへばりついてくる。


「食ってんのかてめーは。」


相変わらず細い。
和樹より筋肉ついてない気がする。回された手の袖から白い腕が出ていてなんか痛々しい。

そんななりしてっから和樹が心配するんだろうが。少しは自覚とか持ってくれればもっと好感が持てるだろう。

「ほら、起きろ」


さっきから微かに香る石鹸みたいな香りが鼻腔をくすぐる。
なぜだかドキドキしてしまうから早くこいつから離れたい。


「桐生、おきろ」


「んー…やだー…」


やだ?殺してやろうかほんとこいつ。


「殴られてえの?ほら起きろ」


「ん……ひよくんあったかい……赤ちゃん体温…」


俺は走った。
背負われてる桐生が不満げに呻いたがそんなの関係ねえ。


あったかい、と言いながら頬ずりをされたうえまさぐるように手をシャツに突っ込まれたのだ。


次郎からしたら体温を求める本能からの行動だったがひよりはなけなしの純情が壊されそうになったのだ。



「んふふ……うどんおいしい」



とりあえず起きたらぶっつぶすと誓ったのだった。