次郎部屋 | ナノ
クリスマス
「で、このケーキ誰にもらったの?買ったわけじゃないよね?」
善ちゃんがケーキ買うとか普通に考えてありえない。似合わないしレアだから写真撮ったら親衛隊あたりに売れそうだ。
「もらいもの。親衛隊からもらった」
「ふうん」
珍しい。受け取るなんて。
頭で思い描いた人物の嬉しそうな笑顔。よかったね親衛隊さん。
でも食べてるのが俺ってところが申し訳ない。
なんとなく無言でひたすらケーキを口に運ぶ。
善ちゃんも特に喋らず、沈黙の中ただフォークとお皿の当たる音が響いていた。
食べ終わり、ふと善ちゃんのほうをうかがうと善ちゃんも食べ終わっていた。
どこか遠くを見るようにしてコーヒーを飲む横顔はとにかく色っぽい。イケメンはやっぱり滅びるべき。
コーヒーより暗い色の瞳が遠くを見ながらゆっくり細まる。
飲むこむ時のわずかな揺れでさらりと銀色が揺れてなんかとても綺麗だった。
「……なに。」
いつから目が合っていたのか分からないけど、気づいたら細まった目が俺を捉えていた。
「ううん。善ちゃんて綺麗だなあと」
思って。
なんか気まずくなって目をそらす。綺麗ってどうなんだろ。
いや最高に褒めてるつもりなんだけど。
なにも返答がなくて、ちらりと伺うと善ちゃんはまた微妙な顔をする。
「煽ってるの?」
「え?って、うわ」
眉にしわをよせた善ちゃんが俺からコーヒーカップを取り上げて、そのまま横に倒される。
一気に反転した視界にちらつく銀色がやっぱり綺麗なんて思った俺はどこか冷静だったんだろうな。
「俺も綺麗だと思うよ」
「自分のこと?」
「まさか。」
次郎のこと。
耳元でささやかれてぞくぞくした。俺を捉えた善ちゃんの目が、また一段と色っぽいからいけないんだ。
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