次郎部屋 | ナノ
出発前の





side柴田善


次郎も自分もほとんど同時に達し、腕の中でときおりビク、と動く次郎を愛しく思った。


好き


もう一度伝えたときには多分次郎は眠っていたと思う。


ベタベタになっていた体をどうにか綺麗にしよう、と濡れタオルで拭った。



次郎の寝顔をこんなに間近で、ゆっくり見られるのはいつぶりだろう。

いや、目にしていてもこんなに安らかなのは久しぶりだ。


自分でも驚くぐらい穏やかな気持ちだった。


付き合えるわけじゃない


次郎と両思いになったわけでもない


それでもすごい幸せだ。


次郎のスウェットも残念なことにベタベタになってしまっていて少し罪悪感をおぼえたがまぁいいだろう。


脱がせて持っていく予定の自分のトランクから自分のTシャツをだして着せた。


時計をみると意外にも時間はあまり経っていなかった。


といってもあと数時間でゲートには行かないといけないけれど。


すやすやと眠る次郎の頬を撫でる。


すべすべで、白くて、白すぎて病気なんじゃないかってくらい白い


対照的に真っ黒で艶やかな髪の毛は相変わらずの猫っ毛だ。


唇も発色がいい。
口紅塗ってるの?ってくらい綺麗な紅色だ。


…覚えていよう


数ヶ月だけどこの愛しい子と別れなきゃいけないんだ。



全てを覚えていよう



そっと首筋に唇をよせ、思いっきり吸い付く。


付いた印に満足して何度も、いろんなところに印をつけた。


白い肌によく映える。


気がついたら頬を涙がつたっていた。


初恋だ。


こんなに愛おしくて、こんなに切なくて


どこが好き、といわれたら答えられないくらい好きだ。


「次郎、さようなら」


寝ている次郎の寝息を奪うように口づけをしてから、そっと離れた。