次郎部屋 | ナノ


ぎゅうと抱きしめると意外に体温は低い。嫌がるそぶりもなく、ただおとなしいこのひとに少しだけ感謝した。


俺に触れながら綺麗って言った。
うん、知ってるよ、俺綺麗だもん。


なのに、このひとに言われるだけでなんだか嬉しい。
人のことなんて無関係、と思わせる無気力な顔で、ふにゃりと笑う。


白くて、細くて、真っ黒な髪と、真っ黒な目。平凡だと思ったら地味に美人。化粧がはえそう。

それで、笑うとすごくうざくて、すごく胸がいっぱいで、なんか溢れそうになる。


総じて嫌いだ。大嫌い。



「好きじゃないよ君のこと」


「気が合いますね、俺もです」


へらりと笑った人に、またどうしようもなく何かが溢れそうになる。



頭を抱えるように抱き込めば、苦しいと文句を言う。
そんなの知らない。

そんなことより、そうじゃないんだよ



(あふれそう)



(なにが)



(なんだかすごい)


あったかくて。