U・シンデレラヴィジョン | ナノ



こんにちは。
U・シンデレラヴィジョン、無事完結いたしました。
皆様に満足していただける作品になりましたでしょうか?

U・シンデレラヴィジョン本編はこれにて幕を閉じました。無事、3月5日に終わらせることができて安心しました。
正直、自分の感想を言うと…盛りすぎたかなあ、と。
44話というお話の中で、本当に怒涛のように色々なことが起こりました。
何故大学生にしようかと思ったかというと、人が人生で一番「本能に従って行動できる年齢」だと思ったからです。子供は夢に希望を膨らませても一人では何もできない。かといって大人になってしまえば生まれる社会のしがらみにがむしゃらに抗えるかというと、とても難しい。年齢はもう大人と言われるけれど、胸の内の情熱を完全に鎮火できる年齢ではない。やろうとすれば自分で働くこともできて、遠くに出掛けることもできる。大学生の二年から四年は、人が最も理想を追い求められて、同時に失敗する恐ろしさも知ってしまっている唯一の期間なのでは、と思っています。私自身は大学には通わず働きに出てしまったので、絶対にそうだ、と言い切ることはできませんが、やはり周りの友人知人を見ていても、夢や目標、時には娯楽に対し全力で向かっている姿が印象的でした。

今回の主人公である水竿芽夢と幸村精市は、互いに時期は違えど幼い頃に大切なものを失う痛みを経験した者同士でした。違う点といえば、幸村が見いだせた希望が水竿には訪れなかったことです。幸村は再び立ち向かう意志を手に入れ、水竿は再び失う恐ろしさを拒絶していました。そんな二人の類似点と、確実に違う人間なのだと分かる言動に気を配りました。

私の書き物をするときの大前提の条件が、「感情移入すること」です。
もし自分が彼らと同じ状況に置かれたとして、自分が彼らならどう行動するか。登場人物に成りきるという段階から、いかに「その人間そのもの」に成るかというのが自分の中で一番重要なことだと思っています。成りきるだけならそれは想像や願望であり、結局は第三者的な意見になってしまう。

たとえば、中学時代の水竿が幸村のお見舞いに病院を訪れるシーン。実際に私が何度か書き直した話でした。
幸村の中にあった明るく気さくな水竿芽夢のイメージを守るなら、きっと私は「来たのが私でごめんね」とは書かなかったと思います。一度きりの見舞いにもならなかったでしょう。
ただひたむきに明るいばかりの人間なんてきっといないです。普段は温厚な幸村でさえ病室で部員に怒鳴り散らすことがあるくらいなのだから。見舞いに行った水竿は、不安や気まずさを抱えていたはず。そう思って出てきたのが、その台詞でした。
当然、私自身の願望もありました。ヒロインが彼を支えられる存在であればと考えもしました。けれど、それではこの物語の主人公の「水竿芽夢」はいなくなってしまう。明るくて気さくで、けれど人より多くの痛みを知っていてとても臆病。そんな彼女の表現には本当に悩まされっぱなしでした。

幸村に関しては、やはり原作から数年の差があるので、感情移入はしてもそれなりの願望は入ってしまったのかな、と思います。ただ、当初のお話のイメージは「幸村が臆病な女の子を救う」というもので、幸村はどちらかと言えば大人の考えをする男性で進めていくつもりでした。それが、終わる頃にはもしかしたら幸村が一番女々しいのでは…と疑ってしまうほどでしたね。それは多分、私の願望よりも私が見てきた「幸村精市」という人間らしさを優先した結果なのでしょう。彼は人間らしい強さと弱さを、どちらも人より多く抱えているのではないでしょうか。結果から言えば、幸村が救うというより「互いに負担をかけあって、互いに許しあう」といった終わり方になりましたが、それは今の私にできる最高のラストだったと思います。
もちろん、回収しきれていない伏線や、もっと深く込み入った話も書いていきたかったのですが、あまりごちゃごちゃしすぎてはただでさえ読みにくいのにキリがなくなってしまう気がしたので、かなり多く割愛しております。それに関しては、また機会があれば書き進めていけたらなと思います。

それにしても、とんでもない昼ドラだな…と思われた方もいらっしゃると思います。実は始めからそういう作品にしてやろうと企んでおりまして、常に色んなことが起こっている正に昼ドラ展開を構成していました。初めは予定になかったオリジナルの登場人物もサークルを絡めるあたりから際限なく現れだして、自分でプロットを見ていても誰が誰か分からなくなるほどでした。ただ、彼らも一人の人間として僅かながら設定が生きていくのは楽しかったです。

本音を言うと、今までで一番書きにくい話でした。その分、一番悩んで一番時間を費やしたと思います。人間らしい素の感情を描けていたら良いなと思います。二次創作を始めて7年ほど経ちますが、私自身の中で強く印象に残る作品になりました。
もちろんこれで終わりではないので、本編に入れられなかった閑話や番外編も少しずつ書き進めていきますので、そちらもよろしくお願いいたします。

それでは、長くなりましたが私からのご挨拶はここまでにさせていただきます。ご愛読、本当にありがとうございました。
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テーマ「人外ファンタジー」
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