日記 | ナノ
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ドカン。突然、何の前触れもなくフィールドを突き破った音。まるで爆発でも起こったようなそれに誰もが立ち止まり、振り返る。続けて、ぽてんと軽く弾みながらフィールドに落下し、転がるサッカーボール。開け放たれた扉の前に佇む誰かの姿を確認して、顔色を変えた人間が約三名。


「こんなところに居たのね。幸次郎くん、佐久間くん」
「か、会長…!?」


帝国学園生徒会長、南条琴子その人だった。こんなところ、などと彼女は言うが、此処は愛媛県だぞと誰もが言いかけて、口を噤んだ。後が怖いからだ。にっこりと微笑むその表情の下には、悪魔どころか閻魔大王が巣くっていると言っても過言ではない。中断された試合。最初に痺れを切らせたのは真・帝国を率いる不動明王だった。


「おいおい、帝国学園の生徒会長がこんなとこまで何の用だ?こっちは試合の真っ最中なんだぜ」
「ごめんなさい、うちの生徒がお邪魔してるって聞いたから、迎えに来たのよ」
「はっ、それはご丁寧にどうも。けど、こいつらは自分で真・帝国を選んだんだ」


ゆっくり、琴子の視線が不動の後ろへと向く。その空色と目が合った源田、佐久間はぴんと肩を上げた。


「それ、本当なの?」
「…ああ、俺たちは自分でこの場所を選んだんだ」
「もうあなたの所へ戻るつもりはない」
「ほらな。お呼びじゃねえんだよ、生徒会長さん」
「……そう」


琴子の表情が明らかに曇る。心の底から悲しむような、普段ならば有り得ない表情に傍観者となっていた鬼道は目をぱちぱちと瞬かせた。とはいってもゴーグルのせいで誰一人と確認は出来なかったが。
しかし、これはどういうことだろうか。突然、佐久間と源田が動いた。佐久間は眼帯の上から黒地の眼帯を被せ、あろうことか源田は自分の髪を一束掴むと、力任せに引き抜いた。ぶちっ、という音と痛々しい二人の行動に雷門、真・帝国メンバー皆が口をあんぐりと開いた。しかし、二人はそれに構うことなく歩きだし、不動に見向きもせず琴子の傍らについた。


「おっ、おまえら何してやがんだ!」
「煩い!俺は愛に生きる!」
「てめえこそ黙れ爆発しろ!!」
「命とプライドなら命を取るに決まっている」
「源田おまえはあの生徒会長に何をされた!!?」


必死に止めようとする不動だが、二人は琴子の隣から一歩たりとも動かなかった。正に形勢逆転、琴子の口元が弧に歪む。


「…よし、キャラバンに戻るぞ」


ゴール前で構えていた円堂の一言で、雷門メンバーは真・帝国グラウンドに背を向けた。この出来事で過度なストレスに襲われた不動は円形ハゲになったと後に語られたが、おそらく誰も気付かなかったことが唯一の救いだった。
真・帝国学園とはなんだったのか。


―――
こんなネタがあった。
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