01

最近ベポがおかしい。

必ず夜10時に出掛けていき、日付が変わってから帰ってくる。帰ってきたベポは妙に機嫌がよかったり、逆に妙に落ち込んでいたり。何処へ行っているんだ、何があったんだと聞いても答えてくれない。俺に言えねえことをしているのか。気になる。
俺はベポをつけることにした。ベポが誰かに脅されて、毎日呼び出されている可能性だってある。心配だ。ペンギンにベポを尾行させた。
ペンギンからの報告は、思いがけないものだった。「ベポは女と会っています」その後もペンギンは細かく報告を続けていたが、俺の耳には入らない。女?女だと?俺はベポを呼び出した。


「お前、毎日女と会っていたのか」
「え…!キャプテン、どうして知ってるの」
「勘だ」
「そっか…さすがキャプテン。なんでもわかるんだね」


ああ、ベポはこんなに純真なのに。俺のベポに手を出す女は何処のどいつだ。


「その子はね、すごく優しいんだ」
「ほう」
「いつも決まった時間にそこにいて、おれにお菓子をくれるんだ」
「約束しているのか?」
「うん。明日も来るからねって、必ず言うんだ。でも来ないときもある」
「ちゃんと連絡は来るのか?」
「来ないよ。連絡先なんて知らないもん。来るか来ないかは、おれが行ってみないとわからない」
「そうか」


そうか、そうかそうか。そのどっかの女は、ベポを菓子で釣って毎日誘き寄せた挙げ句、勝手にすっぽかしてるわけだ。ベポをもてあそんでるわけだ。…許せん。


「ベポ、俺もその女に会っていいか」
「もちろんだよ、キャプテン!すごく優しい子だから、きっと気に入るよ」
「…ああ」
「どうしたの、目のくまが濃くなってるような…」
「気のせいだ」


その女、バラしてやる。


△▽


ベポがいつも座るというベンチに腰掛け、女を待つ。そこは大きな塾や銀行、保険会社なんかが集まったオフィス街から少し離れたところにある公園だった。噴水の近くのベンチで待ち合わせているそうだ。俺たちの住む場所からここまではだいたい30分。これは俺たちだからこその時間で、普通の奴らはその三倍くらいかかるだろう。こんなに遠くまでペボがわざわざ会いに来るなんて、一体どんな女なんだ。やはり白熊か。
一時間、二時間。日付が変わってからもしばらく待ったが、女は来なかった。ベポが悲しそうに呟く。今日は来なかったなあ、と。


「ごめんねキャプテン。会わせてあげたかったんだけど」
「気にするな。来ない女が悪い」
「そんなことないよ。あの子は忙しいだけなんだ」


女を庇うベポ。優しい奴だ。俺は落ち込むベポを立たせ、家に帰ろうと促す。


「菓子なら俺が買ってやる」
「え、そんなの悪いよ」
「いいんだ、俺も食う。行くぞ、ベポ」
「…アイアイ、キャプテン」


さて、俺のベポを悲しませる馬鹿女をどうしてやろうか。


11.08.02