ユニットを組んでいて、更にはいくら双子だからとは言え、四六時中行動を共にするということではない。
兄貴には兄貴の予定があれば、俺は俺で都合だのなんだのがある時だってある。
しかし今がまさにその時なのかと問われれば素直に頷くのは難しいが、俺としてはそうであれば面白いかもな、程度には思っている。

朝飯一発に例のハンバーガーが食べたくなった俺は、隣のベッドで未だ夢の中を彷徨う兄貴を置き去りにし、向かったのは隣の部屋。
俺たちの"マネージャー"でもあり"幼馴染"である名前の部屋だ。
まあ、マネージャーとは言えどそれは事務所が認めていない非公式的な肩書きで、悪く言えば俺たちの使いっ走り?
名前を言い表す言葉として最も適切なものは、どちらかと言えば"幼馴染"の方だろう。

兄貴のことは寝かしといてやるが、こいつは別。
俺1人で出歩くなと散々口酸っぱく言われている身としては、その通告を無視してこれ以上自由が利かなくなるのは困る。
かと言って、せっかくのプライベートな時間にも関わらず、隣に事務所が用意した公式のマネージャーがいるのはなんとも気分が悪い。
何のためのオフなんだっつの。
そう言う時こそ、俺は幼馴染を使うのだ。
どれほど熟睡してようが、私用に熱中していようが関係ない。


「おーい名前、起きろ」


ノックもせず、カードキーを差し込むと同時にロックの解けた扉を押し開く。
玄関から正面に見える机は空。
浴室にも人の気配はなく、部屋の奥のベッド辺りにその気配は集中していた。
オートロックの扉が閉まり切るよりも先に部屋の中へと歩みを進め、静まり返った部屋に靴音を響かせる。
靴底がカーペットに沈む感覚はもう慣れたもんで、それだけでは違和感のいすら抱かなくなった。


「名前、起きろ―――」


思わず歩みが止まり、その後に続く言葉が空気となって喉の奥へと飲み込まれる。

確かに名前はそこにいた。
ベッドの中。
一体どんな寝相の持ち主なんだと言いたくなるようなそれで、名前は安眠を貪っていた。

ベッドの傍に立つ俺から見えるのは、真っ白なシーツの下から伸びる2本の細い脚。
仰向けに寝ているのか、左脚の膝は立てられ、右脚はただ真っ直ぐに伸びている。
曲げられた左脚がシーツを捲り上げ、真っ白な太ももがシーツの海に沈んでいた。
そこから上は完全に隠れていて、まさに頭隠して尻隠さず。

とにかく、やたらと目に痛い光景だった。
悔しいことに、良い意味で。

規則正しく上下するシーツで顔は見えないが、こいつの脚ってこんなに綺麗だっけか、と思わず見入ってしまう。
つか、息できてんのかな。

隠し事も後ろめたさもない、ただの幼馴染。
なのに、この身体中の血液を押し上げるこの劣情はなんなんだ。
身に覚えはあるが、認めたくない。


「―――お前が悪ィんだからな」


これは自分でも分かるほどの逆ギレと開き直り。
何かしらのワンクッションを入れないと落ち着かないほど、片膝でベッドに乗り上げ、薄暗い部屋に浮かび上がる真っ白な太ももに唇を落とさずにはいられなかったのだ。

吸い付いて、舐めて。
少しだけ歯を立てれば、流石にびくりと太ももが揺れた。
それから、呼吸のリズムが覚醒する。


「………」
「よう」
「………しょうだ」


ムクりと上体が起き上がり、その拍子にシーツが落ちる。
寝ぼけたその顔を見た途端、先ほどまでの劣情が罪悪感へと姿を変えた。
しかし俺はそれさえも心地良く思いながら、何事もなかったかのように名前の乱れた髪に触れる。


「今からメシ行くから、支度しろ」
「……え、わ、わかった」


こいつが完全に覚醒するには多少時間がかかることはよく知っている。
俺はもたもたとベッドから降りようとする名前の姿に、緩く微笑みかける。
意図せず、無意識に溢れた笑みだ。
我ながらそんな笑みを気持ち悪く思いながらも、今の表情を作り出す感情のなかにあったそれを振り払う。

勘違いすんなよ。
俺がこいつに抱くそれは、兄貴とか、ハンバーガーに対するやつと同じだからな。

愛しいとか、そんな感情を名前に抱くなんて、まさか、この俺が?







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