部屋の片隅を陣取るベルベットのソファにも目もくれず、彼は真っ赤な絨毯の上に片膝をつき、恍惚とした仕草で面を上げた。
その視線と交わった途端、ヒュッと喉が鳴る。

唇でゆったりと弧を描きながら、その青白い指を伸ばし、辿り着いた先は私の、脚。

赤に彩られた爪先を撫で、何の遠慮もなくその指を足の甲に滑らせる。
足首を通り過ぎた手の平が、脛から脹脛へと道筋を変える。
脚そのものが神経になってしまったのかと錯覚してしまうほどに、コウキの手の動きにつられて肩が跳ねた。


「逃がさないよ」


ぐるり。
独り言のようなその言葉が、私の首に巻きついた。

脛に戻った手が膝まで這い上がり、赤いドレスを物ともせずに太腿に触れる。
まだ、理性はしっかりと残っていた。
大した抵抗になったのかは定かではないが、肌蹴たドレスの裾を引っ張ってコウキの手の甲に押し付けた。


「僕だけが知る"きみ"になって」


コウキは私のドレスの裾を払い除け、肘掛に両手を付いてこちらに身を乗り出す。
途端に影が降り、視界が暗くなる。
熟したチェリーのような瞳のなかに、閉じ込められた私を見つけた。

冷たくて薄い唇に、これ以上の抵抗をする理由も見つからない。

既に私の体には、彼の言葉がたくさん巻きついている。

せめて、その言葉たちだけでも床に叩きつけられたら良かったのに。
じわりじわりと体を侵すその言葉が、心地良いと思ってしまった。







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