誰もいない部屋に居ても仕方がないよね・・とりあえず出てみよう、かな
恐る恐る扉を開け部屋から出てみるも 右を見ても左を見ても打開点となる情報はなくただ長く続く廊下に思わず溜息がでた。
「最初から詰まづいてこれからやっていけるかなー…」 「ねえ、キミ誰?」 「うわあ!」
さっきまで全く人の気配を感じることがなかったはずなのに突然現れた声に驚き振り返る。
目と目があった瞬間、その状況を信じることができなかった。
「ボボボボ、ボス!」
冗談じゃない冗談じゃない冗談じゃない。 見覚えがあった青年の正体を確認すると同時にまるで世界が終わったと言わんばかりにサーっと一気に血の気が引いた。ドクドクと早くなる鼓動に表情がついて行けず口角をを上手に上げようとするも反抗でもするように強ばるばかりだった。
「や、あの!これはですね…えっと」 「・・・・・」 「決して怪しい奴とかではなくて…」 「・・・・・」
「あぁ・・さっき寝てた子か」
「え!?」
なんで知って…っていうか寝てたのバレてる!
もう嫌だ、泣きそう。じわりと胸のあたりからこみ上げてくる感情をどうしていいのか分からずあたふたとその場を行ったり来たりして落ち着かない。
そんな様子を見兼ねたのか、ボスは責めるわけでもなく「壇上からって意外によく見えるんだよ」と、そうクスリと笑うだけだった。
「ところでさ、どうしたの。迷子にでもなった?」 「あ、いえ…その。」 「うん」 「・・・」 「・・・」
「・・・迷子で、す」 「あはは、正直」
「俺も最初は慣れなくてね。いつもリボーンに怒られてたよ」そう笑いながら話し始めたボスに思わず はあ、と間の抜けた返事をしてしまう。なんで私ボスとこんな世間話を してるんだろう。冷静に考えたらすごいこと…っていうかとんでもないことなんだろうけど、
とんでもなさすぎてついて行けないよー
「そうだ。ねえ、名前は?」
「…こずえです」
こずえね、そう言葉に出して確認するようにボスはゆっくりと私の名前を繰り返す。すると同じぐらいのタイミングで廊下の先から男性が走ってくるのが見えた。彼もやはり黒いスーツを着た青年で銀髪と、眉間にシワを寄せ今にも殴りかかってきそうな程の不機嫌オーラが印象的だった。
「あれ、10代目!部屋にお戻りになったはずじゃ…って、そこの女!やっと見つけたぞ テメェどこほっつき歩いてんだ!」
「えぇ…私!?ご、ごめんなさい!」
強い力で腕を掴まれ引きづられそうになる私を見てボスは「隼人」と名前を呟く 隼人と呼ばれた銀髪の青年は動きを止め、手を放した
「ごめん隼人、俺が彼女に用があって引き止めてたんだ」 「! そうでしたか」 「あ…あの、」 「もう大丈夫だから。隼人、連れていってあげて」 「はい」
では失礼します。そう言って一礼をし背を向けた彼とボスを交互に 目を追う。人差し指を口にあて「秘密」とでもいうようにボスは笑っていて、
「優しい人だな」
少しだけ緊張がほどけたのか 私は小さく 笑うことができた。
「こずえ」
「は、はい」
「ボンゴレにようこそ。これからよろしくね」
そう言って部屋に戻るボスに返事をする前に隼人さん(?)に「早く来い!」と叫ばれる。戸惑いながらも離れる背中に一礼をして 怒鳴る彼の後を追いかけた。
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